昨年のマグロの初競りでは、香港資本の『板前寿司』とデッドヒートを繰り広げた寿司チェーン『すしざんまい』が、史上最高の1億5540万円で青森・大間のマグロ競り落とし、大きな話題となった。そのマグロを獲った漁師の元には、8300万円*1ともいわれる莫大な“ご祝儀”が入ったため、仲間からのやっかみの声やいたずら電話が相次いだという。
*1:昨年の1億5540万円の場合、5.5%が荷受会社(卸売会社)、4%が大間漁協、1.5%が青森県漁連に。残る約1億4000万円に40%の所得税がかかり漁師には8300万円ほどが振り込まれたとみられる。
ところが、今年の初競りは736万円と、昨年の20分の1にまで大暴落してしまった。『すしざんまい』によれば、「今年も上限は考えていなかった」(広報)そうだが、下落の原因のひとつに、ライバルの『板前寿司』がガチンコ勝負から降りたことがあげられる。
「昨年の1億5000万円はやりすぎじゃないかという声があり、今年は、初競りには参加しても、最高値の競り争いはしないと社内で決めていました」(板前寿司・広報)
それに加えて、今年は、大間産のマグロの出荷本数が昨年の5倍以上にものぼる22本だったことも影響している。
「うちも大間産のマグロを2本競り落とさせていただきました。1本は259㎏で595万7000円、もう1本が95㎏で120万円と、いいマグロが適正な値段で落札できたと思います」(板前寿司・広報)
「『板前寿司』の撤退」と「大間産マグロの出荷本数急増」によって起きた大暴落。今年最高値のマグロを獲った漁師の竹内正弘さんは、「落札額の高い低いは関係ない。この大間の町で1番になれたことが何よりも嬉しい」と言うが、昨年の1億5000万円騒動で一攫千金を夢見た漁師の中には、落胆の色を隠せない人も。大間のある漁師が言う。
「20代、30代の若い漁師が“初競りで最高値をつけるマグロを獲る”と息巻いてて、高齢化が深刻な漁師業界にいいニュースが出たと喜んでいたのですが…。今回の年末年始は、億万長者を狙って、正月休みにもかかわらず、昨年の4倍くらいの船が出ていたんです。みんな頑張ったから、初競りの大間産のマグロの出荷本数が増えたんですけど、それが結局、値段を下げる原因になってしまって…」
※女性セブン2014年1月30日号