野球のセオリーとして、プロでは投手が2ストライクノーボールに追い込んだ後、1ボール外すのが半ば常識となっている。この理由について金田正一氏と桑田真澄氏が、本音で語り合った。
──なぜ、そうなるのですか?
桑田:単にベンチの指示です。追い込んでから3球勝負して、打たれたらもったいないという心理でしょう。現役時代、僕もピッチングコーチから「今季は2ストライクに追い込んだら、必ずボールを投げろ」と指示を出されたことがありました。打たれたら罰金。だから皆従うんですよ。
でも僕はこの作戦が嫌いでした。ボールを投げずに勝負したこともあります。それで三振を取ったこともあった。だけど、中にはバットを折りながらもヒットにされたこともあって、罰金を取られました(苦笑)。
金田:監督は誰だ。
桑田:内緒です。
金田:大体予想はつくが、川上(哲治)さんの流れだろうな。
──ということは金田氏も指示された?
金田:されたよ。ワシも抵抗したな。野手出身の監督ならではの指示だよね。例えば星野(仙一)ならどんどん攻めさせるだろうな。
桑田:投手心理としては、2ストライクから完全にバットに届かない位置に外せというわけだからイヤですよね。僕だったら同じ外すならインハイに投げたい。
──メジャーも「2ストライクから1球外す」?
桑田:メジャーにはそもそも「ボールを投げろ」というサインがありません。全部勝負です。僕がメジャーに行ったとき、捕手に「初球はボールから入って、様子を見ようか?」と聞いたら、「なんで外すんだ? もったいないじゃないか」といわれました。
金田:それが普通の心理だよな。結局、打たれなきゃいいんだ。でもまァ、相手が川上さんだし、ワシも最終的には従っていたが。
※週刊ポスト2014年1月24日号