「2.5」から「0.5」に数字が小さくなっても、その恐ろしさは大きくなるばかりだ。上海にある復旦大学教授のカン(=もんがまえに敢)海東(カイトウ)氏らの研究チームは現地メディアに対し、「『PM0.5』は、すばしっこいネズミのようなもの。気流とともに肺胞にまですぐに拡散する」と注意を喚起した。
中国の大気汚染物質といえば、「PM2.5」が定番。「PM0.5」とは聞き慣れない名称だ。
「PM2.5は2.5マイクロメートル以下の粒子のことで、今回中国で研究されているPM0.5は0.5マイクロメートル以下の粒子のことを指しています。
つまり、PM2.5の中にはPM0.5も含まれていることにはなるのですが、今のところ環境省では0.5マイクロメートルという小ささで区切った粒子について知見をもっていません」(環境省水・大気環境局)
カン氏らの研究チームによれば、2.5マイクロメートル前後の粒子は気管支に達するものの健康に直接的な影響は与えなかったが、0.5マイクロメートル以下のPM0.5は、粒子が小さいため肺胞まで到達し、粒子が血液中に流れ込んで心血管系の疾病を引き起こす可能性があるという。
そこで気になるのが、街に溢れるPM2.5対策グッズだ。
中国の煤煙などの影響によるPM2.5の飛散が報じられてから、マスクや空気清浄機で「PM2.5対応」の商品が急増したが、果たしてPM0.5にも有効なのだろうか。全国マスク工業会専務理事の藤田直哉氏が答える。
「当会加盟社で『PM2.5対応』と表記のあるマスクは、ウイルスの大きさである0.1マイクロメートルを通さないテストを受けたものです。商品に『PFE』もしくは『VFE』クリアとあれば、PM0.5対策として機能すると考えていただいて構いません」
一方、空気清浄機についてはどうか。日本電機工業会の担当者が答える。
「当工業会加盟社では、PM2.5除去性能試験の基準を、8畳の部屋でタバコの煙を90分以内に99%除去できることを指標にしています。タバコの煙は0.1~2.5マイクロメートルですから、PM0.5にも対応ができるということになります」
改めて日本企業の技術力に驚かされるが、PM2.5騒動で中国からの需要が伸びたのと同様に、PM0.5の脅威が広がれば、中国からの予期せぬ“追い風”となるのかもしれない。
※週刊ポスト2014年1月24日号