膨張する中国のマネーは今、どう動いているのか。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。
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春節が迫る1月中旬、中国の国務院の国管局は、中央省庁の公務員の接待費が対前年比で33%減少したと発表した。CCTVなど主要メディアが一斉に報じた。
この時期の公表には、習近平体制になって打ち出された贅沢禁止令が大きな効果を上げたことを強調する目的と同時に1年で最も消費が刺激されるこの一大商戦期を前に、官僚たちが気を緩めて宴会に興じたりすることのないようにする戒めの意味があったと考えられた。
国管局の調査は、中央省庁の食堂から出される生ごみの量が減少したことまで及んでおり、さすがに官僚たちから苦笑が漏れたという。
だが、贅沢禁止令により高級品の消費が落ち込み、高級レストランの倒産や業種転換が進んだ一方で、官僚たちに利益が集中するといった不公平な実態は、現実には何も変わっていないとも指摘される。
というのも今、中国社会では高級レストランでの接待が影をひそめた反面、現金による賄賂が膨らむというように、より直接的な形で利益を還元する方法が採られているというのだ。
その中心的な役割を担っているのが、書画や古美術、骨董、そして切手や古銭などだという。まさに「上に政策あれば、下に対策あり」というわけだが、一部には、これならば高級レストランでの接待の方が消費を刺激する分だけ良かったのではないかという声も聞かれるというのだから皮肉だ。