中国の習近平・国家主席の重要講話集「習近平総書記重要論述句読」が中国内で発売されたが、その表紙がかつての毛沢東語録を同じ、深紅のカバーを使用していることから、「習近平主席は尊敬している毛沢東主席になりきっているのではないか」と揶揄する声が出ている。中国ニュース専門のウェブサイト「多維新聞網」が報じた。
習主席の重要講話集は習近平指導部のスローガンでもある「中国の夢」や自らの公約でもある「腐敗撲滅」のほか、理想信念、改革・開放、外交戦略、群衆路線、科学発展、組織作風といった8章から構成。習主席が中国共産党総書記に就任してからこれまでの講話121編をまとめたもので、出版元は人民出版社。
「この一冊で、習近平主席の政策や政治観、理想などがすべて分かる」という構成で、これも毛沢東の思想を凝縮した「毛沢東語録」と共通している。
かつての文化大革命(1966~1976年)では、赤いビニールカバーがかかった毛沢東語録を右手で高く掲げて、その一節一節を大声で復唱して街中を練り歩くというスタイルが流行った。習氏は父親(習仲勲元副首相)が大幹部だったことから、批判される方だったが、それでも片田舎の陝西省に下放され、農作業に追われていた際にも、毛沢東語録で毛沢東の思想を学習した経験をもつ。
このため、いまでも習氏の演説や講演では随所に毛沢東の言葉が散りばめられており、いまも毛沢東の影響が根強く残っていることがうかがえる。
習氏は毛沢東生誕120周年記念日だった昨年12月26日、党最高幹部の党政治局常務委員6人のほか、党政治局員ら主要幹部を引き連れて、北京の毛沢東主席記念堂を訪れ、その遺体を仰ぎ見て、毛沢東の功績を偲んだと伝えられる。
さらに、習氏は毛沢東について「過ちがあるからといって全面的に否定することもできない」と述べるとともに、「革命に貢献した偉大な人物」と評した。しかし、習氏は「革命指導者は人間であり神ではない。偉大だからといって神のように極端に崇拝することはできない」と付け加えており、毛沢東の評価について慎重な見方を示している。
これについて、『習近平の正体』(小学館刊)などの著書もあるジャーナリスト、相馬勝氏は、「どちらが本音かと言われれば、前半部分だろう。習氏は昨年1月『改革・開放の30年とそれ以前(毛沢東時代)の間に根本的対立はない』と述べて、毛沢東を信奉する左派に傾斜した“新解釈”を披露しており、改革に逆行するような考え方を明らかにした。
だが、その結果、中国内で極左路線を勢い付かせることになり、社会が不安定になる可能性が出てきたために、後者の見方も示したのだろう。習氏の本音は明らかにガリガリの毛沢東主義者と言ってよい」と指摘している。