生命保険のテレビCMは、有名人が出演するもの、キャラクターを使ったものなど多種多様だ。“感動的なストーリー”を見せるCMもまた多い。だが、『生命保険の嘘』(小学館刊。大江英樹氏との共著)を上梓した、大手生保の元営業マンで現在「保険相談室」代表を務める後田亨氏は、そうしたCMを見て保険会社を決めるのは、問題だと指摘する。
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人の感情に訴えるCMの手法には疑問を感じます。特に違和感を覚えるのは、がんに罹ったことのある人が登場するCMです。
7~8年ほど前、保険を営業する人が登場して、自分ががんを経験したから「『がん保険』をお客様に勧めるためにこの仕事に就いた」などと話すCMがありました。その人に他意は無くても、何かが違うと感じました。
近年では、親をがんで亡くした女性フィギュアスケーターが、自身も若くしてがんに罹りながらも選手生活を続け、リンクでパートナーの男性からプロポーズされるシーンを使ったCMもありましたが、これも心中にスッキリしないものが残りました。
がんに罹った経験がある当事者が登場するCMを見て感情が刺激されることと、がん保険の価値は関係がないはずだからです。
感情が揺さぶられるCMを通して、保険に入ることがまさに「お守り」のように感じられるのかもしれません。
※後田亨・大江英樹/著『生命保険の嘘』(小学館刊)より