中華料理チェーンの主力、ギョーザはもはや国民食といっていい。昨今、巷に「羽根付きギョーザ」や「変わり種ギョーザ」が出回るようになったのは、ギョーザの付加価値を高めるための経営戦略だと都内の中華料理店経営者は語る。
「バブル末期の1990年頃まで、ギョーザは町の中華屋でオジサンが食べるものというイメージが強かった。ところが、ブームの羽根付きギョーザを取り入れた途端、若い女性が連れだって来店するようになりました。ひと手間加えるだけで見た目も華やかになるし、価格も1皿50円ほど上乗せできる。羽根付きギョーザの登場は画期的でしたね」
女性客や仕事途中のサラリーマンを意識して、ニンニク臭を抑えたギョーザも登場している。
「大阪王将のギョーザは、食べた時のニンニクの風味や旨みをそのままに、食後の臭いを従来比で80%カットしています」(運営するイートアンド社広報)
タレにも工夫を凝らす。餃子の王将で卓上に置かれているのは「餃子のタレ」「醤油」「お酢」「ラー油」など。タレはギョーザに合うように調合したオリジナルブレンドだ。
「タレは基本的に醤油4対酢6の割合でブレンドしたものを使っています。夏場はさっぱり感を出すためさらに酢の割合を増やすなど、ブレンドは各店の判断に任せています」(王将フードサービス広報)
タレに多めの酢を使うには、それなりの理由がある。
「中国はギョーザに黒酢を付けるのがスタンダード。酢によって酸化した油分が中和されるので、肉や野菜本来の味を楽しむことができます」(横浜中華街『均元楼』段孝宗・総支配人)
大衆食文化に詳しいライター・松浦達也氏も語る。
「餃子の王将でウォッチしていると、最初の一個はお酢だけで食べている人がいます。味の変化を楽しむ意味でも、まずはお酢だけでギョーザを食べるというのはお勧めですね」
このほか、味噌ダレなど店舗独自の付けダレを用意している店もあるので、試してみるのも一興だろう。
「餃子の王将は店長が大きな裁量権を持っていて、客のさまざまなリクエストに応えてくれることが多い。ギョーザに関しては『よく焼き』や『両面焼き』のほか、ほんのりとしたキツネ色に焼きあげる『うす焼き』に応じてくれる店もあります。他のチェーンでも焼き方は柔軟に対応してくれることが多いので、好みでリクエストしてみるのも良いでしょう」(前出・松浦氏)
※SAPIO2014年2月号