日本のプロ野球では2ストライクノーボールに打者を追い込むと、1ボール外すのが半ば常識となっている。これは単に監督の指示だと金田正一氏と桑田真澄氏は口をそろえる。二人とも1ボール外す指示には抵抗したというが、金田氏も川上哲治監督には最終的には従ったと話していた。そして、基本的には敬遠をしなかった金田氏が、その理由を明かした。
──国鉄スワローズ時代は2ストライクノーボールのあと、1ボール外すようにベンチから指示されたのですか?
金田:誰がワシにそんなことをいえるんだ。ひっぱたかれるぞ。
桑田:金田さんの時代の監督ってどなたでしたっけ?
金田:いっぱいいるよ、しょうもないのが。ワシにクビにされてどんどん変わっていったな。
桑田:……(ひきつった笑い)。
金田:一番困ったのが敬遠の指示だ。国鉄時代、敬遠をするとウチの親父が怒ってなァ。「戦わないなら辞めちまえ!」って怒鳴るんだ。だから監督が敬遠の指示を出しても、「ウチは親父が怒るから敬遠はやらん」って拒否したことがある。
──桑田氏は敬遠についてはどんな考え?
桑田:僕は試合の状況と、自分の調子と、打者の調子を見て、「ここは仕方ないかな」という時には敬遠していました。ただ、これも投手心理として、やりたくないことの一つですね。特にベンチから敬遠のサインが出たら屈辱ですよ。ただ、勝ちたいから仕方なくやっていましたね。
※週刊ポスト2014年1月24日号