中国では現在、習近平国家主席が先頭に立って、腐敗撲滅キャンペーンの指揮をしているが、地方幹部の抵抗は並大抵ではないようだ。とりわけ経済先進地の広東省は江沢民元主席を中心とする上海閥の影響が強く、同省トップで、習主席の次の最高指導者として下馬評が高い胡春華・同省党委書記(党政治局員)は一昨年12月の就任以来、8か月間で15回も電話や郵便などによる脅迫を受けたというから深刻だ。
広東省は1998年から2008年までの10年間、上海閥の最高幹部である李長春氏と張徳江氏がトップを務めた。また、やはり上海閥の張高麗氏も1984年から2001年まで広東省で行政経験を積み、深セン市党委書記や省党委副書記などを歴任。これら3氏はいずれも党最高幹部である党政治局常務委員を務めており、党内の発言力が強い。
広東省における上海閥の影響力を排除しようと、胡錦濤前主席は2008年3月に腹心で、中国共産主義青年団(共青団)閥の汪洋・党政治局員を広東省のトップに送りこんだ。汪氏は2009年、同省政協主席や深セン市長、元広東省規律検査委書記、元同省公安庁副庁長ら上海閥の息がかかった幹部を腐敗容疑で逮捕する荒技をやってのけた。
汪氏の後任で、やはり共青団閥の胡春華氏も就任してから8か月間で20人以上の幹部を逮捕するなど幹部の腐敗に対して厳しい態度で臨んでいる。
ところが、黙っていないのが上海閥の幹部らで、呉邦国・元全国人民代表大会(全人代)委員長や李長春、張徳江氏らが続々と視察の名目で広東省を訪問。この狙いについて、「上海閥が関わっている腐敗問題に関わらないよう胡氏に無言の圧力をかける目的がある」と香港メディアが伝えている。
また、広東省内でも胡氏への圧力は日増しに強くなっており、分かっているだけで、胡氏への脅迫は15回に及んでいる。このため、胡氏は身の危険を感じ、党中央に腐敗撲滅のための援軍を要請。党中央は工業情報省次官の馬興端氏を広東省党委副書記として派遣し、さらに人民解放軍参謀部の精鋭4人を胡氏のSPとして送りこんだ。
胡氏は習氏の党総書記の任期が切れる2022年10月以後、次期最高指導者に就任するとの下馬評が高い。このため、上海閥に近く、共青団と距離を置く習氏らが逆に、胡氏のスキャンダルを暴くために、習氏に近い現役の次官や軍の精鋭を広東省に送りこんだとの見方もネット上で囁かれているという。