今年も大学受験の季節がやってきた。大学受験の成果を語る対象としてしばしば挙げられるのが東京大学の合格実績だが、かつてその入試が行われなかった年があった。1969年の「東大入試中止事件」だ。
学生運動全盛期の1968年、全国の医学部の学生と研修医が処遇改善を訴え、活動拠点だった東大で、全共闘が安田講堂を占拠する「東大紛争」が起きる。当局が機動隊を突入させて武装解除されたが、その影響で、翌1969年の東大入試が中止に追い込まれた。当時の東大を目指していた現役受験生の多くは浪人を選択。しかし後のない浪人生は、一橋大など別の難関大へと方向転換を余儀なくされた。
東大はこの中断を機に入試制度改革に着手。1971年から5教科の前期試験、通過者に4教科の二次試験を課すという、現在の「センター試験」導入後の東大入試とほぼ変わらぬものになった。
また、この改革で東大一次試験に該当する共通試験を全国の国立大で実施するという提案がなされ、「共通一次」のひな形になっている。このため、この東大紛争が、センター試験や共通一次のルーツと考える教育関係者は多い。
※週刊ポスト2014年1月24日号