次期“財界総理”の本命と見られていた日立・川村隆会長(74)に経団連会長の座を辞退を決意させたのは、夫人のこんな一言だった。「あなた、経団連にご奉公なさったって、日本は何にもよくならないのよ……」──。川村会長をよく知る関係者が、「ここだけの話ですよ」と明かしてくれた。
「会長は苦労人なんです。一度は子会社に転出させられたのに、2009年、巨大負債を背負った日立の再建請負人として再び本社に呼び戻された。そこで心血を注いで日立再建を成し遂げた」
そんな折にまた舞い込んだ経団連“再建”の要請。逡巡する川村会長の決断を促したのが冒頭の言葉だ。
「川村会長も今後は家族との時間を大切にしたい、と語っているようです」(前出・関係者)
それにしても、財界活動は日本のためにならない──これほど今日の経団連の内実を言い表わした言葉はない。かつては時の政権の政策や人事にも影響力を発揮した経済界最大の業界団体も、1990年代に政治献金を控えると存在感は低下。現米倉弘昌(76)体制下では日本銀行の金融緩和策を「無鉄砲」と徹底批判し、安倍首相の反感を買った。
このたび川村会長の固辞により火中の栗を拾うことになったのは東レ・榊原定征会長(70)。が、早速、東レ社員からは「うちは金がないのにどうしよう」といった嘆き節が聞こえる。
会長を送り出すともなると、年間数億円規模の出費を強いられる。それに見合う費用対効果が今の経団連にはないというわけだ。
※週刊ポスト2014年1月31日号