「脱原発」を掲げ、小泉純一郎・元首相とタッグを組んで、東京都知事選(2月9日投開票)への立候補を表明した細川護熙・元首相。脱原発について推進派の読売新聞が社説で〈そもそも原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である〉(1月13日付)と書いたように批判を強めているが、産経も批判の論調を展開している。だが、その論調は、まったく理屈になっていない。
細川氏を〈首相も国会議員も投げだしの過去〉(1月10日付)と評し、小泉氏についても〈「73歳定年制」を厳格に適用した過去があるのに細川氏を例外扱いするとすれば、説明が求められることにもなりそうだ〉(1月11日付)と書いた。
しかし、首相投げ出しの過去は産経が愛する安倍晋三首相も同じであり、やはり産経が愛する石原慎太郎元知事は、国会議員を任期途中で辞任し、都知事も途中で投げ出したではないか。
そもそも、小泉氏が首相時代に決めた「73歳定年制」は自民党の純粋比例議員だけであり、小選挙区選出の議員には適用されていない。しかも、細川氏は自民党選出でもないから、こじつけにしてもお粗末だ。全国紙幹部がその背景を明かす。
「フジサンケイグループは、新聞の部数は頭打ちの上、フジテレビの視聴率もガタガタ。そこで、安倍政権が推進するカジノ解禁に社運をかけ、お台場にカジノを併設する総合レジャー施設の建設計画に参加している。細川氏はそのカジノ解禁に否定的だから、細川都知事が実現すると元も子もなくなりかねないと危機感を募らせ、なりふり構わぬ小泉・細川叩きに走っている」
政府・自民党はなおも追及の手を緩めずに細川氏の“昔の女性”など化石のようなスキャンダルを必死で発掘中である。さらには「細川を陰で操っているのは小沢一郎・生活の党代表と野田佳彦・元首相、菅直人・元首相の旧民主党勢力だ」(自民選対幹部)とアナウンスして、ネガティブキャンペーンを仕掛けている。
「小泉人気を小沢、野田、菅のマイナスで打ち消す。毒を以て毒を制する作戦」(同前)なのだという。かくして執拗な「小泉・細川を潰せ」謀略の裏側には、官邸・自民党とメディアの利権維持という打算が渦巻いている。
※週刊ポスト2014年1月31日号