席に着くなり、石原さとみ似の黒髪美人はこちらの眼をじっと見ながら優しく囁く。「アンニョンハセヨ」。韓国人からすれば、それが“ネイティブ”ではないことはすぐわかるらしい。記者が「こんにちは」と返すと、「日本の方だったんですか」と相好を崩した。
ここはソウル・江南区の繁華街。流行を発信する街として多くの若者が行き交うこの街に、今、日本人の女性たちがホステスを務めるキャバクラが次々とオープンしているという。
実際に来訪した記者が店内を見回すとソファテーブルが5セットあり、席数は40前後。女性の年齢層は20~30代前半と幅広い。でも、どうして韓国に?
「ウ~ン、なんとなく。皆、昼間は語学の学校に通っていたり、仕事をやっていたり。わざわざ夜やるために、海をわたってきた子はいないです。私は韓流ドラマ好きが高じて韓国語を勉強しに来たんですけど生活が苦しくってこの仕事を……」と石原さとみ似の彼女。
日韓関係が冷えこむなか、思わぬところで「草の根外交」が行なわれているようだ。常連の韓国人は、「日本人の女性は優しい。くだらない話にも真剣に耳を傾けてくれます。韓国女性にはないです(苦笑)」という。
このたびオープンしている店は、ボトル1本とおつまみなどのセット料金(時間無制限)で20万~30万ウォン(2万~3万円)と韓国人の一般的サラリーマンが通える大衆的なキャバクラだ。人気の秘訣を韓国人ジャーナリストに聞こう。
「私の見た所、韓国人ホステスと日本人ホステスの違いは、“少女時代”と“AKB48”ですね。韓国での女性の武器は、誰もが認める見た目の美しさ。そして飲み屋の女性のタイプは“直球勝負”が多い。肉弾戦でガンガン来る代わり、こっちも疲弊する。
でも日本人女性は、ごくごく普通の素人っぽい雰囲気。受け答えも合コンのノリ。直球を投げてこないので客もフルスイングできないけど、それでもハマってしまう“愛嬌”と“おしとやかさ”が彼女たちにはある」
※週刊ポスト2014年1月31日号