金田正一といえば日本プロ野球史上唯一の通算400勝を達成した大投手。4490奪三振は、ノーラン・ライアンに更新されるまで世界記録だった。1969年の引退時は巨人に在籍していたが、最多勝など数々の記録を打ち立てたのはプロ入り1年目の1950年から1964年まで在籍した国鉄スワローズ時代だった。もし、プロ入り1年目から強い巨人で投げていたら。『プロ野球何でもランキング』著者の広尾晃氏の協力で、夢のデータを算出した。
カネやんの記録で特筆すべきは、その勝ち星の8割以上の353勝を、「打てば三振、守ればエラー」と謳われた弱小チーム・国鉄で達成していることだ。最終的に400勝は巨人で達成したが、最初から巨人で投げていたらどうなったか。
「試合数は同じリーグなので変わらない。ただ、巨人の勝敗と国鉄の勝敗がまったく違うために、勝率をかけると、金田はほぼ負けないことになってしまう。そのため巨人の勝率で国鉄の勝率を割り、80%の数字を実際の勝利数にかけて計算しました。敗戦は勝利数から算定しています」(広尾氏)
その結果、444勝254敗、防御率2.34で4490奪三振という驚異的な数字になった。1955年にはセリーグ記録、プロ野球歴代3位タイの40勝をあげ、最多勝も6回と実際の2倍獲得する。勝利数は500勝に届かなかったが、もちろん歴代1位の記録だ。登板回数、奪三振数も歴代1位である。この数字をご本人に見せてみた。
「バカタレ、もっと勝つよ。それに巨人の守備をバックに投げていたら、完全試合やノーヒットノーランばかりじゃないのか。人工芝だったらエラーもないから、600勝は行ったな」
※週刊ポスト2014年1月31日号