現在、選挙戦が展開されている都知事選では“原発”も争点になっているが、もし細川護熙氏(76才)ら「脱原発」派が当選したら、今後、どのように脱原発は進んでいくのだろう。
実は、いち地方自治体である東京都の知事には、全国にある原発をなくす権限はない。『「フクシマ論」 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社刊)などの著書で知られる社会学者の開沼博氏はこう指摘する。
「原発の廃棄や再稼働の決定、エネルギー政策の基本方針の転換には、内閣の閣議決定など国政レベルでの意思決定が必要です。知事選の結果がそのまま政治に反映されるわけではないなかで、新都知事に何ができるかは未知数です」
例えば沖縄県知事は、長く普天間基地の県外移設を訴えてきたが、それはいまだにかなってはいない。それどころか、県民の意思は知事の挫折の前に、遠のく一方でもある。1月19日に投開票された名護市長選では、移設反対の現職が再選されたが、安倍政権は移設方針を変えるつもりはない。そこには、地方自治体のもつ力の限界が垣間見える。
東京都は東京電力の4番目に大きな株主ではあるが、実際に保有している株は全体のわずか1%強。持っているのは“決定権”ではなく、“影響力”にすぎない。しかし、「それでも今回は脱原発を実現できる可能性があります」と語るのは、地方自治に詳しい法政大学教授の五十嵐敬喜氏だ。
「東京は人口も経済規模も他の都市とはケタ違いです。細川さんが勝利し、都知事として脱原発を強く訴えた場合、日本国民に与える影響力は計り知れません。原発事故で苦しむ福島県だけでなく、柏崎刈羽原発のある新潟県、浜岡原発のある静岡県など、原発の立地自治体で住民たちが声を上げ、日本中に広く連鎖していくでしょう。強硬な姿勢が目立つ安倍政権ですが、さすがに国民から沸き起こる脱原発の声を無視はできないはずです」
※女性セブン2014年2月6日号