インフルエンザが猛威を振るっている。
国立感染症研究所によれば、1月19日までの1週間で報告された患者数は約66万人(約5000の医療機関への調査)にのぼり、前週から倍増した。大阪府や沖縄県のように大流行の恐れを示す「警報レベル」の地域も次々と出ている。
インフルエンザ対策として、手洗い・うがいの徹底やマスクの着用などはよく言われることだが、意外にも「歯磨き・口腔ケア」が予防効果を高めることは、あまり周知されていない。
噛み合わせの研究を推進する学術団体、日本顎咬合学会の次期理事長で、ウエハマ歯科医院(茨城県土浦市)院長の上濱正氏が話す。
「口腔ケアによるインフルエンザ予防は特に死亡率も高い高齢者に有効です。
奈良県歯科医師会高齢者歯科保健委員会の調査では、介護福祉施設で歯科衛生士が高齢者に対しブラッシング指導や舌磨きを実施したところ、通常の歯磨きをしていた施設に比べてインフルエンザ発症率が10分の1に激減したと報告されています」
今年のインフルエンザは高齢者が重症化するとされるA香港型が全患者の半数と多い一方、2009年に日本中がパニックになり子供たちの学級閉鎖や隔離騒ぎも起こした新型インフルエンザの「H1N1型」のウイルスも28%を占めているという。
当時、子供たちの感染拡大を防いだのも歯磨きだった。
杉並区内の2つの小学校が給食後の歯磨き指導を徹底したところ、2校の新型インフルエンザの学級閉鎖率は平均45%だったという。これは他の区立小学校41校の平均79.6%に比べて大幅に少ない結果となった。
では、毎食後の歯磨きを怠ると、なぜインフルエンザになるのか。前出の上濱氏が解説する。
「口腔内細菌はインフルエンザウイルスを粘膜に侵入しやすくする酵素(プロテアーゼやノイラミニダーゼ)を出すため、感染しやすくなります。また、歯周病による炎症もウイルス感染を促進させます」
毎日の歯磨きや専門的な歯のクリーニングなど口腔ケアを加えると、インフルエンザの予防効果はより一層高くなるという。
この時期、念入りな歯磨きがインフルエンザの流行に流されない近道であることを、肝に銘じたい。