じっくり選んで検討するのはとても面倒だから、「他人と同じモノ」で済ませる……買い物や外食をする時、そんな「選び方」をしたことはないだろうか。ラーメン店で同僚がチャーシュー麺を選んだから「僕もチャーシュー麺」というのと同じように生命保険を選んでいる人も多いという。『生命保険の嘘』(小学館刊。大江英樹氏との共著)を上梓した「保険相談室」代表の後田亨氏は、そうした消費者の「選び方」に落とし穴があると警告する。
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「皆、どうしているのでしょうか」
先日、ある企業の労働組合主催の保険セミナーに招かれた際、社会人1年生の社員の方からそう尋ねられました。親や先輩からは「社会人になったら保険に加入するのが当然」のように言われているが、自分と同世代の人たちは実際にどんな選択をしているのか知りたいと言うのです。
私は、「たしかに『皆、どうしているのか』は気になりますよね。でも、『皆の選択』に倣おうとしてはいけないと思います」と答えました。
「皆が選ぶ保険」は多くの場合、保険会社や営業担当者が高い収益・報酬を得るために消費者を「誘導した結果」である可能性が高いからです。つまり、商品の売り手にとって都合が良いだけで、消費者として望ましい選択ができているとは考えにくいのです。
むしろお手本とすべきは保険会社で働く人が入っている保険だと思います。それも営業担当者ではない人がいいでしょう。営業部門では販売促進につながる教育が行なわれるためか、入院リスクへの対応から老後資金準備まで、ありとあらゆる事態に保険で備えたがる人もいます。それを真似していたら、いくらお金があっても足りません。
その点、管理部門で働く人などは対照的です。彼らは基本的に「子供が自立するまで、世帯主の万が一に、一定期間、低料金の保険で備える」くらいだからです。具体的には個人向け保険の半額くらいで済むことがある「団体保険」(勤務先を通じて入るグループ保険)を愛用しています。
入院保障などを求める人が皆無とは言えませんが、ほとんどは「健康保険が最強」という考え方をしています。また、長く低金利が続く中、保険を使って貯蓄することにこだわる人も例外的だと言っていいでしょう。
ちなみに保険営業をしていた時代の私は「皆は……」と尋ねる人が“大好き”でした。「皆が入っている保険」を提示することで、短時間で成約に至ることが多かったからです。
※後田亨・大江英樹/著『生命保険の嘘』(小学館刊)より