投手であれば敬遠はしたくないという意見で一致している金田正一氏と桑田真澄氏。敬遠の四球が投げられると客席からは大きなブーイングが発生するが、客席だけでなく、ときには試合が中断するもめごとの原因にもなるのが死球だ。現役時代の与死球が通算72個の金田氏と77個の桑田氏が、故意の死球は存在するのかについて語り合った。
金田:敬遠なんかせずに立ち向かわなきゃ。そもそも勝負もしないのに、4球も投げるなんて球数の無駄だ。
桑田:僕も敬遠にサインなんていらないと思っています。できることならルールを変えて、監督が「敬遠します」と宣言すればOKにしてほしい。時間と球数の無駄ですよ。ただ、それを打つ人もいるから、野球の面白さのひとつがなくなっちゃうかもしれませんね。
金田:ブツけりゃいいんだよ。4球も投げずにな。
桑田:それは金田さん以外はムリです(笑い)。
──やはり「報復」のような故意死球は存在するのですか?
金田:監督の時には「ブツけろ」とサインを出したよ。
──えっ、爆弾発言!
金田:バカタレ、選手は「監督がまたいっている」と思って、実際にはブツけないさ。ワシはベンチから、「ブツけろ! 殺してしまえ!」と叫んでいるのが日課みたいなものだったからな。それぐらいの気迫で投げろということだ。
勘違いしてもらっては困るが、ワシは現役時代、死球はほとんどなかったよ。20年間で72個。まァ、ワシは東尾(修)みたいに、インサイドの厳しいところを投げられなかったというのもあるがね(注・東尾氏は20年間で165個、日本プロ野球歴代1位)。打ち取れる相手にブツけるなんてもったいない。
桑田:本当そうですよね、もったいない。
金田:まァ、腹が立ったヤツにはブツけたこともあったかもしれんが(笑い)。桑田もあるだろう。
桑田:ありませんよっ!! 晩年、コーチから「お前は綺麗な球を投げすぎるから、1試合で2~3人にブツけろ」といわれたことはありましたけど。僕は「そういう野球はしたくないので」と断わりました。
※週刊ポスト2014年1月24日号