世は空前の愛犬ブーム。ジャパンケネルクラブの調査が始まった1955年には38だった登録犬種は、現在132。全国の登録頭数は約678万と、その飼育数は猫を大きく超える。
愛犬ブームの変遷を振り返ると、昭和に入り、まず愛されたのがシェパード。治安が悪化していたこともあり、番犬・軍用犬として軍から飼育が奨励されていた。その後、戦後となり番犬として愛されたのがスピッツだが、泣き声がうるさいと、徐々に人気は下火になっていった。
1960年代に入ると、爆発的な愛犬ブームの黎明となる「御三家」が登場する。マルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアである。
「高度成長時代、癒しを求めた中流家庭を中心に爆発的な人気となりました。その後、50年から現在に至るまで犬の人気は映画やドラマ、テレビCMといったエンターテインメントでの起用に大きく左右されるようになりました」(大正5年創業の専門店「コジマ」総務)
バブル期に入るとハスキーやレトリーバーなどの大型犬が流行するが、バブル崩壊、集合住宅の建築ラッシュなどに伴い、小型犬がブームの主役となっていく。
ここ10年ほど人気犬種のトップ10は小型犬が独占。ベスト3は「平成の御三家」はプードル、チワワ、ダックスフンドで、特にプードルが2008年から首位となっている。
そんな中、昨今注目を浴びているのが異なる犬種同士を掛け合わせた「ミックス犬」だ。純血種ではない雑種なのだが、生まれる個体ごとに毛の長さや毛色、顔立ちなどが全く異なり「世界に1匹だけのオリジナル犬」ともてはやされている。例えば、毛の抜けにくいプードルと毛が抜けるペキニーズをミックスすると、毛が抜けにくい「ぺキプー」が誕生するなどという利点もある。
他にも、マルチーズとキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのミックス「マルキャバ」は、マルチーズの白に、キャバリアの持つ白、黒、茶という色の種類を組み合わせて色が豊富。その他、チワワとシー・ズーのミックス「チワズー」や、マルチーズとトイプードルのミックス「マルプー」など、種類は様々。
「ミックス犬人気は10年ほど前からですが、ここ2~3年人気は特に顕著です。小型犬のミックスが主流で、純血種に比べ5万~10万円ほど値段が安いというのも特徴です」(「コジマ」総務)
物理的にはいくらでも組み合わせがあるミックス犬。「チワワもプードルも飼いたい……」、そんな愛犬家のニーズをくすぐることもあって、ブームの裾野はさらに広がっていきそうだ。
※週刊ポスト2014年1月31日号