「冬、眠くて仕方ない」「甘いものばかり食べたくなる」…そんな経験は誰にもある。しかし、日常生活に支障をきたすほどの過眠・過食の気配を感じたら「冬うつ」かもしれない。
光に当たらないと「冬うつ」になることはわかっているが、詳しいメカニズムはまだ解明されていない。仮説の中でも有力なのは、メラトニンの分泌が乱れることだ。
メラトニンとは眠気をもたらすホルモン。光を浴びないと分泌の時間が長くなり、いつまでも眠気が続く。リズムが崩れることで、夜に眠れなくなることもある。
うつ病と同じ症状が表れるのは、「セロトニンが欠乏するのだろう、と考えられている」と日本大学医学部精神医学系の内山真主任教授。セロトニンとは、精神の安定をもたらす神経伝達物質だ。
メカニズムはともかく、原因が“光不足”にあることは間違いない。そのため「光を浴びると治る」ことも医学的に確認されている。
「最も確実な予防法は、早寝早起きを心がけ、午前中に日光を浴びること。冬はカーテンを開けたまま寝て、朝日を浴びて目覚めるのもいいでしょう。勤めている人は少し早めに家を出て、駅や会社の日当たりのいい場所で10分くらい日光浴をするのもいい方法です」(パークサイド日比谷クリニックの立川秀樹院長)
医療機関における「冬うつ」の治療法も、光を当てる「高照度光療法」が基本となる。専用の機械を使い、毎日1時間ずつ5000ルクス程度の光を浴びる。内山主任教授によると、「通常、1週間程度で効果が表れる」という。
最近、パソコンやスマホのLEDから出るブルーライト(青色光)も注視されている。青い光にはメラトニンの分泌を抑える作用があるからだ。
「寝る前にはパソコンやスマホを見ないほうがいい。特に布団の中でのスマホは最悪です」(立川院長)
夜にパソコンを使う人、朝から晩までパソコンの画面を見ている人は、ブルーライトを防ぐ「パソコン用メガネ」を使うといいだろう。
ただし、ブルーライトは必ずしも悪玉ではない。
「そもそも太陽の光でメラトニンの分泌が抑えられるのも、その中にブルーライトが含まれているから」(内山主任教授)
パソコン用メガネを一日中かけていると、ブルーライト不足で逆に「冬うつ」を起こす可能性もある。必要に応じて使いたい。
※女性セブン2014年2月6日号