2月9日の投開票に向けて走り出した東京都知事選挙。脱原発を掲げて立候補した細川護熙元首相について大メディアはバッシングを繰り返している。「反原発は国政でやれ」というのが代表的な批判だ。そしてもう一つ、各紙が横並びで報じているのが、佐川急便からの1億円借り入れ問題である。
細川氏の佐川急便問題は、総理になる11年前、熊本県知事選出馬の前年(1982年)に同社から自宅改修などのために1億円を借り入れ、知事時代に返済していたもの。時系列からいっても、政界を揺るがした東京佐川急便事件(1992年発覚)とは直接関係がない。
実際、事件さなかに報じられた東京佐川急便の1991年融資先リストでも、同社の細川氏への融資残高は「ゼロ」となっており、細川氏が総理に就任(1993年)する前に、借金を全額返済していたことがわかる。
今回の佐川急便借金報道でも、各紙は〈細川氏 会見また延期 政策作り難航 佐川問題の説明も調整〉(朝日1月17日付)、〈借入金問題 説明二転三転……辞任〉(読売1月16日付)などの見出しで、疑惑がいまも続いている書き方をしている。
その報じ方は、小沢一郎・生活の党代表を追い込んだ陸山会事件報道とそっくりである。小沢氏の政治資金事件の公判は、いわゆる「期ずれ」と呼ばれる資金管理団体の土地取引をめぐる政治資金収支報告書への記入方法が適正だったかどうか争われた(無罪確定)。
ところが、大メディアは土地購入資金が「闇献金」だったのではないかという疑惑を書き立て、争われているのが「期ずれ」だと報じることなく、「疑惑に説明責任を果たせ」と書き続けることで、事務手続き上の問題を、さも汚職事件であるかのように印象付けた。
そうした細川疑惑報道の“司令塔”のひとつが自民党の情報調査局だ。大手紙記者が明かす。
「情調のスタッフから、『細川の佐川疑惑についてレクチャーしたい』『とにかく疑惑を蒸し返してほしい』と連絡が入る。新聞記者だけでなく、雑誌メディアの情報源にもなっている」
一連の細川氏叩きが、官邸と大メディアの合作であることを物語る証言である。
※週刊ポスト2014年2月7日号