「価格はB店より少し高めだが、店員が親切だからA店で買う」。どこで購入しても同じ商品なら、「売り手の人柄」が購入先の決め手になる場合がある。しかし、そうした判断は生命保険の契約では禁物だ。『生命保険の嘘』(小学館刊。大江英樹氏との共著)を上梓した「保険相談室」代表の後田亨氏が解説する。
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私が行なっている有料の保険相談にいらっしゃるお客様に現在加入中の保険について尋ねると、「全部、担当者に任せている」といった答えが返ってくることがあります。「保険は人で選ぶことにしている」と言う人もいます。
これはどう考えても変だと思います。担当者の当たり外れを判断するには、担当者以上に保険に精通している必要があるはずです(そうでなければ担当者が保険を任せるに足る人物かそうでないか判断できません)。ところが、自分が保険に精通していれば、そもそも担当者は不要です。
おそらく、自分自身で選択・判断するのは負担感があるので、「担当者を信じて保険を選んだ」ことにしたい人が多い、ということなのでしょう。一方で、「何かと面倒なので、他人任せにしています」と(ある意味正直に)明言する人は意外なくらい少ないのも事実です。ひょっとしたら、問題の根はもっと深いところにあるのかもしれません。
改めて考えると「人任せ」にしてしまう背景には、金融商品と向き合うこと以上に、「自分自身と向き合うこと」を避けたいという気持ちがありそうです。
特に保険の場合、気が進まないシミュレーションを行なう機会が多々あります。病気になった時の自分、延々と仕事ができない状態が続く自分、老後の自分などを想像して対策を考えるのは基本的に億劫なものでしょう。老後資金など、絶対的に不足する試算結果が出る可能性もありますから、逃げ場が無くなったような気がするかもしれません。
そんな精神的に追い込まれかねないテーマについて「すべて○○さんに任せている」と言えたら、(それでは何も解決しないとしても)少し楽になれるような気もするのです。
とはいえ、本気で「相手はプロなのだからプロに任せるのが一番だろう」と思っていたら危険です。
担当者はあくまで「保険販売のプロ」であって、リスク管理や資産形成のプロではない場合があるからです。例えば、保険会社が発信する販売促進情報をひたすら覚え込んでいるだけの人に、自分の今後についてすべて任せるのは、いかにも不用意です。
※後田亨・大江英樹/著『生命保険の嘘』(小学館刊)より