『菅原酒店』は、杜の都・仙台で明治28年から続く老舗酒屋。創業118年の酒屋と聞けば、どっしりとした構えの大店というようなイメージを持ってしまうが、それはちょっと違った。
「うちは5坪ですよ。角打ちスペースはその半分。全体で10人も入れるかなあ。短いカウンターは、5人も立つといっぱいですね」と、5代目の前田尚養(なおきよ)さん(36)が、笑いながら店内にぶら下げられた注意書きを指差した。
そこには、まったく同じ格好をした6人がカウンターに横向きでギュー詰めに並んだユーモラスなイラストと共に、『※混雑時は、ダークダックススタイルにご協力ください』とある。角打ち文化があまり浸透していない東北だが、うれしいことに混雑時の角打ち仁義は、ちゃんと伝わっていることを発見した。
確かに狭い。この夜も常連サラリーマン2人が右端で、女性客1人が左端で飲んでいるルビンガ(アフリカ産木材)製の一枚板カウンターは、もう満席の雰囲気。しかし、そのうちの一人の50代氏がほろ酔い呂律で語る。