冬場に眠くて仕方なくなったり、炭水化物が欲しくなったりする「冬うつ」。光に当たる時間が減ることや、眠気をもたらすメラトニンというホルモンのバランスが崩れることが関係しているという。
「冬うつ」には、様々な対処法があるが、漢方もそのひとつ。総合情報サイト『All About』漢方&薬膳ガイドの杏仁美友さんは、こう語る。
「漢方のなかでは日照時間の短くなる冬の季節を“陰”ととらえます。陰というのは、水分や血液を補い滋養するもの、“陽”というのは体を温めるものと考えていただければわかりやすいでしょう。このどちらが不足してもダメで、陰陽のバランスが取れなくなってしまいます。体内の陽が不足してしまった状態を“冬うつ”といえるかと思います」
春になるとだんだんと温かくなり、陽の気が増えてくるため、陰陽のバランスが正常化する。症状が改善されてくるのはそういう理由からだという。
「冬うつの症状のなかでも、特に足腰など下半身の冷え、排尿の異常があるならば、八味地黄丸(はちみじおうがん)がおすすめです。腰の痛みなどにも効果があります」(杏仁さん・以下同)
下半身は冷えるけど、上半身はのぼせるというタイプには加味逍遥散が向くという。
「血の巡りをよくし、生理不順や肩こりなども解消しますし、血虚からくる動悸やめまいにも効果があるとされます。うつ病や更年期障害のかたにもよく使われる漢方薬です。性格的に几帳面でせっかち、焦りを感じたり、イライラしやすかったり、と気分に抑揚があるタイプの人には有効です」
日ごろから疲れやすく、胃腸も弱い。さらに風邪をひきやすいタイプには、
「補中益気湯(ほちゅうえつきとう)がいいでしょう。消化器系を司る“脾”に作用します。冬うつの場合、食欲が増すわけですが、もともとこのタイプは胃腸が強いわけではないので、オーバーヒートしてしまいがちです。食べたあとにだるくて眠くなってしまったり、寝ても寝ても眠いというのは、漢方では、胃腸の機能が落ちているからだととらえますので、補中益気湯は冬うつに適した漢方薬だと思います」
また、柑橘系の果物をネットに入れて心地よい香りを楽しみながら入浴することも気の巡りをアップさせる。
「体が冷えている人は、体の内側から陽を補ってくれるシナモン(桂皮)を紅茶に加えてみたり、トーストにシナモンパウダーをかけてもいいでしょう。不安感やイライラがある人は、精神安定作用のあるあさりや牡蠣を味噌汁や鍋に入れるなどして取り入れてみてください」
日常生活のなかで漢方をうまく取り入れ、心の冬に負けない生命力を底上げさせよう。
※女性セブン2014年2月6日号