小さな女の子が司会役になり「家族会議を始めます。議題は、2人目をどうするか」と発言して始まるタマホームの新CMが話題だ。1月16日から公開されているその内容をめぐって、動画がアップロードされているYouTubeやTwitterなどSNSを中心にさまざまな意見が飛び交っている。
司会役の子どもに促され、CMでは2人目の子どもをもつか否かについての父と母による話し合いが描写されている。夫婦がお互いの考えを素直に言葉にしてゆく様子に「ふたりめベイビーのCM泣ける」「夫婦で本音をぶつけあっていくのが気持ちいい」「なんか怖いな」「母親、父親、そして独り身の人たちもぶつかるかも知れない壁かもね」など多くの感想があげられている。
肯定も否定も中立もあわせ、CMへの感想は多種多様だ。いずれにせよ、「2人目の子ども」というテーマが、男女問わず既婚未婚どちらの人からも大きな関心を呼んでいることがわかる。
とはいえ「2人目の子ども」というテーマは、たとえ家族や夫婦のあいだでもなかなか口にしづらいもの。赤ちゃんや小さな子ども連れの人に「2人目は?」と聞くのがタブー視される雰囲気が強まっているいま、そういった内容の言葉をかけたとたん無神経だと非難されることもある。それは、2人目以降の子供を持つのが簡単ではない現実が影響している。
昨年実施されたタマホームの調査によると、既婚者の71.8%が理想の子ども数を「2人以上」と答えながら、81.8%もの人が様々な理由でためらっている。2人目以降の子供を持ちたいのに、持てずにいる人が多いのだ。
記者の周囲で具体的な理由を尋ねてみると「子どもは欲しいけれど余裕がない」(20代主婦)「自分の家も欲しいから、子育て費用とのバランスが難しくて2人目をもつ勇気がでない」(30代会社員男性)など苦しい胸の内が聞こえてくる。
これまで「子どもを何人もつか」問題について、子どもはおろかパートナーもいない「非リア充」と称する人たちからは、意見を交わすことそのものを拒む言葉がSNSでは多く見られた。だが、タマホームの「2人目の子ども」CMについては、彼らも思わず感想を口にしてしまっている。
8年前から毎年20万人規模で人口が減少している日本に暮らす限り、希望する子どもの数を持てるかは誰にとっても重要な未来への課題だ。国立人口問題研究所をはじめ、あらゆる試算が今後も人口は減ると予想しており、「2人目の子ども」問題はパートナーを持つリア充だけの悩みにおさまらないのは明らか。SNSで「今日もぼっち」と自嘲する非リア充の人にとっても、社会をどうするかという意味で身に迫った問題なのだ。
触れずにスルーされることが多いデリケートな問題にあえて踏み込む異例のCMは、日常なら黙ってやり過ごす「2人目の子ども」についての本音を、立場を超えて思わずつぶやくきっかけになっているようだ。