総務省と携帯キャリアやメーカーなどがSIMロックを解除することに基本合意してからもうすぐ4年が経つ。一部キャリアにSIMロックを解除するサービスがあるが、まだ利用者は少ない。だが、利用料金を抑えられると日本でもSIMフリー端末が広がりつつある。
システムエンジニアの40代男性は、昨春にSIMフリーの7インチタブレットをMVNO(仮想移動体通信事業者)のひとつIIJのデータ通信専用SIMカードとあわせて購入した。
「いま持っているスマホは、もうすぐ2年契約の縛りが過ぎるので解約します。通話はガラケー、ネットは7インチタブレットで十分なのでスマホはほとんど使わない。タブレットにはIIJのデータ通信用SIMを挿しているので安いのですが、通信量の利用上限があるから無料の公衆無線LANを利用することも多いです」
この男性は、スマホは通話料が30秒で21円と高額なので電話をしたいときはフィーチャーフォン(ガラケー)、ネット検索やSMS利用はタブレットという使い方になり、画面が小さくて操作しづらいスマホをほとんど利用しなくなった。
そこで利用料金を見直すと、ガラケーとデータSIMカードの利用料をあわせた合計よりも、スマホ単体での料金の方が高いことがわかった。分かりやすい結果に、迷わずスマホを解約することにした。
この男性と同じような理由で、ガラケーとSIMフリーのタブレットという組み合わせを選ぶ人が少なくない。
SIMカードとは携帯電話番号を特定するためのIDが記録されたICカード。このカードを挿しかえることで番号や契約情報を移動させる。これまで日本で販売されてきた携帯端末のほとんどは特定のキャリア以外では使えないようロックされた状態だったため、契約時に限られた機種から選ばなければならなかった。
ところが、5万円ノートのEee PCシリーズで知られる台湾のASUSが日本向けにSIMフリーの7インチAndoroidタブレット「Fonepad」の販売を始めた昨年春から、風向きが変わり始めた。
大手電気量販店で、SIMフリー端末と月額1000円以下の格安コースもあるSIMカードのセット販売が増加した。さらに11月にはGoogleがNexusシリーズを、それから1か月経たぬうちにアップルもiPhone5s、iPhone5cと相次いでSIMフリー端末の日本向け販売を始めた。iPhoneはハイエンドのため高額だが、他はいずれも2万円台から購入可能なお得感がある値段だ。
さらにAmazonなどネット通販の発達で個人輸入が手軽になったことも、SIMロックに縛られない端末選びへの流れに拍車をかけている。本体価格が1万円台やそれ以下のものもある、日本未発売の低価格で多様なデザインの商品を購入できるからだ。
SIMフリーのスマートフォン/タブレット、アクセサリを販売しているEXPANSYS JapanマーケティングPR担当の増田恵実さんも「弊社でも日本向けの出荷台数がぐんと伸びています」という。
「5年前と比較すると出荷台数は6~7倍です。人気が高いのは、ドコモでは販売されていないiPadや海外版が先行発売される製品です。Sonyのデザインは日本人に好まれるようで、価格がリーズナブルなXperiaグローバル版の人気も高いです。以前は海外での利便性、いまは安い料金設定を求めてと購入理由の傾向も変わりました。SIMフリー端末は好きなときに機種変更できますし、SIMカードもMVNOだと低価格で済むのでお得だと思います」
ただし、海外版のSIMフリー端末には総務省が認めた電波法に違反しない技術基準適合証明を受けていないものも含まれるので、日本国内での利用には確認が必要だ。
SIMフリー端末というと、ちょっとオタクな人たちが小さな専門ショップで購入する、ごく少数の存在だった。ところがSIMフリーのタブレット販売が拡大し、MVNOのSIMカードは大手電気量販店や流通大手など取り扱われるチャンネルが拡大している。通信料については、端末を購入すると無料でお試し用SIMがプレゼントされるキャンペーンが組まれるなど、低価格競争はしばらく止まりそうにない。
携帯料金の見直しを考えている人は、新製品や新サービスが次々と投入されている今年、SIMフリー端末の利用を考えてみてはどうだろうか。