毎年約3万人が参加する東京マラソンがいよいよ近づいているが、マラソンのように大量のエネルギーを必要とする運動をする際には、いったいどのタイミングで、どんな食べ物を食べればいいのか。立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科教授の杉浦克己氏が解説する。
「当日の食事だけでなく、大会の3日前くらいから脂質は控えめにし、エネルギー源となる糖質(炭水化物)を多めに摂ることが重要です。炭水化物の多い食べ物は、ご飯やパン、いも、麺類、そして砂糖などですが、同時にエネルギー代謝に不可欠なビタミンB群や体調を整えるビタミンCを多めに摂るようにするべきです。こうしたビタミンは果物や色の濃い野菜、ごまなどに多く含まれています」
食事で摂った炭水化物は胃や腸でブドウ糖に変換され、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられ、脳や筋運動のエネルギー源となる。マラソンでは脂肪もエネルギー源として使われるが、グリコーゲンは体内に蓄えられる量が脂肪よりずっと少ない。それゆえ杉浦氏のいうように、マラソン当日までに食事法を考えて、肝臓と筋肉にグリコーゲンを十分蓄えておくことが大切なのだ。
また、欧米のアスリートもかつては普段の食事の延長でスポーツの試合前に肉を食べていたが、食事が発揮できるパフォーマンスに影響を与えることが明らかになった今では、「試合前はパスタ」という選手が多くなっているという。
「大会当日の朝食も、すぐにエネルギーになる炭水化物の多い食事を心がけること。いざスタートの時は“胃の中はからっぽ、でもエネルギーは満タン”という状態がベストです。ご飯やパンなど炭水化物が消化吸収されてエネルギーに変わるには2~3時間かかるので、2~3時間前には食事を終えておくようにしましょう」(杉浦氏)
また、一般ランナーの場合、走っている途中で蓄えていたグリコーゲンも使い切ってしまい、“ガス欠”状態で走れなくなることが珍しくない。
「フルマラソンを4時間程度で走りきる場合、体内に蓄えられた炭水化物ではまかないきれないケースが多くなり、35kmあたりでガクンとスピードが落ちることがあります。そのため、マラソンの後半になったら、糖分を補給したほうがいいでしょう」(同前)
とはいえ、沿道で親切なボランティアが配ってくれるおにぎりやパン、バナナなどで栄養補給をしようとしても、時すでに遅し。そこから消化に数時間を要するため、エネルギーとして使えるのはゴール後になってしまう。満腹感が得られるだけで、タイム短縮には逆効果だ。代わりに、糖分やアミノ酸を含むスポーツドリンクを飲んだり、あめやゼリードリンク、ブドウ糖のタブレットなど、吸収率のよいエネルギー源を携帯して活用しよう。
※週刊ポスト2014年1月31日号