今年1月5日から放送が開始されたNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』。その今後の展開を巡り、歴史ファンの間で早くも議論が起きている。
本作品で岡田准一(33)演じる黒田官兵衛は、戦国時代を生きた知将として知られる。織田信長(江口洋介)の才能をいち早く見抜き、その後は参謀として豊臣秀吉(竹中直人)の天下統一に深く貢献。「戦国一の軍師」と称される人物だ。キレ者として知られた官兵衛だったが、彼の生涯を描くうえで欠かせないのが秀吉による2度の朝鮮出兵だ。
反日感情がエスカレートし史上最悪とまでいわれる日韓関係の現状を考えれば、NHKが描く朝鮮出兵に対して、韓国が鋭く反応することは間違いない。当時、実際に秀吉が戦ったのは、明軍を中心とする『明・朝鮮連合軍』。史実に沿って、朝鮮が明の属国だったことや、対秀吉の主力が明軍だったと描けば、韓国側の怒りが爆発する可能性は高い。
そもそも、日韓の歴史論争となると、いくら日本が理を尽くして説明しても、韓国が情を振りかざして聞く耳を持たないのは慰安婦問題や竹島問題を見れば明らかだ。それだけにどれだけ慎重に時代考証をしても、「物言い」をつけてくるだろう。
極めてナイーブな問題だけに、戦国時代を描いた過去の大河ドラマでは、いずれも朝鮮出兵の扱いはごくわずか。船での出兵や自陣で喋る様子など、秀吉軍が映る場面はあっても、戦闘シーンはおろか、朝鮮側の兵士さえ登場しない。
直近の大河ドラマでは、浅井長政の三女・江(上野樹里)が主人公の『江~姫たちの戦国~』(2011年)で、江の夫・豊臣秀勝(AKIRA)が朝鮮出兵中、当地に敷いた陣地の様子がわずかに登場したのみ。
これまでの大河ドラマで最も踏み込んだ描写は、秀吉と同時代に生きる貿易商を主人公にした『黄金の日日』(1978年)において、戦火で遠く燃え盛る漢城(現・ソウル)を見つめる朝鮮の通信使が、「われらが祖国の美しい都を奪った日本人よ、わが祖国より立ち去れ!」と語り、それを聞いた主人公が涙を流してうなだれるシーンだけだった。
どうも朝鮮出兵を無視するか、あえて韓国の立場に寄り添う描写がこれまでの“大河コード”のようだが、『軍師官兵衛』ではどうなるだろうか。現時点でNHKは、「朝鮮出兵についてどう描くかは未定です」(NHK番組広報)とコメントするのみにとどまった。
※週刊ポスト2014年2月7日号