昨年12月26日の安倍晋三首相による靖国神社参拝は、海外の反発を招く一方、国内の保守支持層から礼賛の嵐となった。だが、ベストセラー『靖國論』の著者で、新刊『大東亜論』を上梓したばかりの漫画家の小林よしのり氏は、そうしたムードを「幼稚」と断じる。
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わしは2005年に出版した『靖國論』で、首相は堂々と靖国参拝すべきだと説いた。あれから10年近く、わしの靖国神社に対する信条は全く変わっていないが、首相の靖国参拝については、もう新たな局面に入ったと思っている。
安倍は参拝すべきではなかったし、これからも参拝すべきではない。我々、国民が静かに参拝を続ければよいのだ。もはやそう言うべきところまで、来ている。
自称保守派のメディアやネット右翼たちは、「安倍首相よくやった」と絶賛しているが、国際的な感覚が全くない内弁慶な議論でしかない。以前のように朝日新聞が中韓にご注進に及んでこの問題をこじらせてきたとか、中曽根康弘・元首相までは普通に靖国参拝していたとか、その頃は中韓も文句を言わなかったとか、そういううんちくを述べても、アメリカを始め世界に対して説得力を持つレベルではなくなった。
中国とは尖閣諸島を巡ってチキンゲームの最中であり、韓国とは歴史認識で外交が行き詰まっているのだが、しょせん国交断絶する気もない。アメリカの後ろ盾に甘えながら、日中韓相互の幼稚な排外ナショナリズムで身動き取れない。そうした日本の姿勢は、中韓と同レベルで欧米から蔑まれ、バカにされている。
安倍はいまや海外で、フランスの極右政党党首ルペンや、ロシアの極右政党党首ジリノフスキーのように、短絡的で偏り過ぎた、口先だけの極右の首相と思われているのだ。
しかし、そう思われても仕方あるまい。というのも、安倍の靖国参拝の動機が、「中韓に屈しないのが愛国者」という思い込みにあることが見え見えだからだ。安倍の支持層は反中・嫌韓の偏狭なナショナリズムに支配された小物の群れに過ぎない。安倍シンパは、中韓の反発を無視して安倍が参拝したことのみに、快哉を叫んでいる。
だが、海外の反応は違う。安倍と安倍シンパの様子は、まるで国際感覚の欠如した幼稚な排外主義的ナショナリズムであるとしか見られていない。
※週刊ポスト2014年2月14日号