昨今のラーメン界を見渡すと、「超こってり系ブーム」「鶏白湯ブーム」など流行の一方で、根強く人気なのが「ご当地ラーメン」だ。
B級グルメブームが人気を後押しし、神奈川にある新横浜ラーメン博物館を中心に、全国津々浦々の知られざる逸品の発掘がなされている。ラーメン評論家の大崎裕史氏はこの説明する。
「札幌の味噌、福岡の豚骨など、大きな単位でのご当地ラーメンは紹介し尽くされ、ご当地の単位が『県』ではなく『市』、そしてさらには『町村』レベルまで小さくなってきています。そういう小さな範囲に存在するご当地ラーメンで美味しいものはまだまだあります」
たとえば、豚バラ肉と野菜を炒め煮にしたピリ辛スープの奈良・天理の「天理スタミナラーメン」(略して天スタ)である。レバーやホルモン、かぼちゃなどが入ったあんかけの「水戸」、にら、挽肉、にんにく、生姜、豆板醤を組み合わせたピリ辛あんかけの「浦和」と並ぶ“日本三大スタミナラーメン”の一角で、都内で最も熾烈な争いを繰りひげているといわれる、ラーメン激戦区の高田馬場で奮闘している。
あるいは、鳥取で創業50年以上の歴史を誇る牛骨ラーメンは、都内だと銀座と高田馬場(『香味徳』)で食べられる。
「それ以外にも進化した徳島ラーメンの高円寺『JAC』、函館ラーメンの八幡山『五稜郭』など、単独で頑張っている店はちらほらあります。個人的には大分県佐伯市のご当地ラーメン・佐伯ラーメンに出てきてほしいですね。豚骨醤油ににんにくとコショウを強烈に効かせたスープですが、バランスが絶妙なんですよ」(大崎氏)
まだまだ“知られざる”ご当地ラーメンは多い。新潟には「長岡生姜醤油」「新潟あっさり」「新潟濃厚味噌」「燕三条背脂」「三条カレー」の五大ラーメンがあり、山形にも「米沢」「赤湯」「山形」「新庄」「酒田」という個性の異なるラーメンが存在している。
「岩手の釜石ラーメンも極細縮れ麺と琥珀色に透き通った醤油味のあっさりスープが調和して旨いんですよ。今後は東北の隠れたご当地ラーメンを発掘して、東京の駒沢オリンピック公園で毎年開催しているイベント“東京ラーメンショー”などで紹介し、復興の一助にできればいいな、と思っています」(大崎氏)
※週刊ポスト2014年2月7日号