これまでアマチュア投手の球を受けること実に180人以上、プロスカウト顔負けの情報量を誇る“流しのブルペンキャッチャー”安倍昌彦氏が今年話題の新人について語った。
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ヤクルト1位指名の杉浦稔大(21、國學院大)の用心深さと大胆さには、“和製ライアン”小川泰弘(昨季ヤクルト2位指名)がダブる。身長は広島の新人・大瀬良大地にもひけをとらない188センチ。スリークォーターから速球とスライダー、フォークを投げ分け、カーブもカウント球としてサラッと使える。
雄大な体躯でも、豪快に投げ下ろすわけじゃない。全身を柔軟に連動させて、ボールを長く持って投げるタイプだから、見た感じ力感に欠けて、指導者によっては「もっと全力で投げんかい!」と叱咤したくなるかもしれない。
だから、この杉浦、ブルペンで光るタイプじゃない。実戦で投げさせてごらんなさい。走者を1人許したら、途端にピッチングが変わるから。137キロだった速球が、次のボールで一気に148キロにアップしたのを、秋のリーグ戦で目撃している。
“スペシャルトップギア”を持っている投手は例外なく一軍で働ける。これは、私の中の黄金則だ。小川の創価大当時がまさにそうだった。
びっくりするような球種はなくても、投げ損じのほとんどない精緻な制球力で両サイドに高低も使って、打者の視線を動かす。激投2年目の小川に昨年並みの勢いがなくても決して責めてはいけない。そのぶんを補って、ひょっとしたら“おつり”まで持ってくるような予感を漂わすのが、ヤクルト・杉浦だ。
※週刊ポスト2014年2月14日号