2014年の世界経済はどう動いていくのか。先進国の中で最も大きな要素となるのは「アメリカ経済の復調」と指摘するのは大前研一氏。以下、大前氏の予測だ。
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政治はオバマ大統領も議会も機能不全に陥っているが、経済は株価が史上最高を更新し続けたり、2013年1~11月の新車販売台数が約1424万台と年換算で2007年以来最高を記録したり、2013年11月の失業率が前月比0.3ポイント減の7.0%と5年ぶりの低水準になるなど、多くの指標で2008年のリーマン・ショックの後遺症から回復する傾向が見えている。
しかも今後は「シェール革命」という明るい材料がある。アメリカ国内のシェールガス埋蔵量は100年分、シェールオイル埋蔵量は200年分を超えると言われ、2020年頃には世界最大のエネルギー輸入国から一転して最大の資源国になるとみられている。
シェールガスは従来の天然ガスや石油より格段に価格が安く、GTL(Gas to Liquids)という技術を使えば、エチレンなど石油化学製品の原料費が現在の数十分の一になるとされている。
ただし「アメリカ復調」とは言っても、世界経済を牽引していくような華々しい主役にはならないだろう。そう見る「懐疑派」の右代表は、FRB(連邦準備制度理事会)議長候補にもなった元ハーバード大学学長のローレンス・サマーズ氏だ。
彼は「アメリカの日本化」「ヨーロッパの日本化」という主張をしている。経済成長率(実質GDP成長率)のIMF推計値を見ると、2013年は日本2.0%、アメリカ1.6%、イギリス1.4%、ドイツ0.5%、フランス0.2%。
2014年は日本1.2%、アメリカ2.6%、イギリス1.9%、ドイツ1.4%、フランス1.0%で、ドングリの背比べだ。
金利もオーストラリア以外は実質的にゼロ金利かそれに近い状況になっている。にもかかわらず景気(GDP)はピクリとも反応しない。つまりアメリカもヨーロッパも、バブル崩壊後20年余にわたって低迷した日本と全く同じパターンに陥りつつある。
前述のようにアメリカはリーマン・ショックの後遺症から脱して “静かな主役”として再登場してはきたものの、2014年以降の先進国は当面、おしなべて低成長で力強さはない。先進国はいずれも金融緩和で株と不動産が高騰するものの、GDPと雇用は伸び悩むというジレンマに陥るとみている。
※SAPIO2014年2月号