中国の北京など大都市圏では1月に入って、微少粒子状物質(PM2.5)の濃度レベル状態が上限の500を突破し、測定不能になる「爆表」状態に陥るなど、深刻な大気汚染に悩まされているが、中国のPM2.5が偏西風に乗り、太平洋を越えて、ほんの数日間で、北米大陸や欧州大陸に到達していることが最新の科学的研究によって明らかにされた。
米紙「ワシントン・ポスト」によると、この研究は中国の北京大学や米カリフォルニア大学アーバイン校、同大ロサンゼルス校が共同で行なっているもので、その調査結果が最近、発表された。
中国内のPM2.5は確実に中国人の健康に影響を与えているが、少なくとも北半球の国々も中国の大気汚染の影響を強く受けていると指摘。
とくに、米国の西海岸は深刻で、地球温暖化の原因の一つである黒色炭素(ブラックカーボン)が大量に飛来。黒色炭素は雨でも洗い流されないため、体内に蓄積され、ガンや喘息、肺気腫など肺のほか、心臓病の原因になることが分かっている。
これは西海岸ばかりでなく、ニューヨークやワシントンDC、ボストンなど東海岸の人口周密地区でも、人々の健康に影響を及ぼしていることが証明されているという。
一方、日本への影響について、同紙は「屋久島の杉が枯れるなどの被害が出ている」などとしている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で中国の環境汚染問題を研究しているアレックス・L・ワン教授はこう指摘する。
「PM2.5など中国の大気汚染というと、どうしても中国政府の環境汚染対策を批判しがちだが、実はそれらの汚染物質は米国に輸出する製品を作る過程で発生しているかもしれないということだ。つまり、間接的な原因は米国など諸外国にあるということも忘れてはならない。
中国に製造拠点を置いている欧米やアジアの企業や各国政府が中国の環境汚染問題の解決のために、それぞれの国の経済政策などを通じて、中国側と協議する必要がある」