ソチ五輪スキージャンプ女子日本代表の高梨沙羅。W杯蔵王大会で見事に4戦連続優勝を果たした彼女が、場内へ向けて優勝インタビューに臨んでいるとき、記者陣から「またか……」という声が漏れた。
「応援してくれたファンの皆さんのおかげで、いいジャンプができました。支えてくれたスタッフに感謝します」
実際、優勝した4戦とも同じような内容だった。試合後の囲み会見でも、似たコメントばかり。「目標に向かってできることからやっていきたい」「記録ではなくいつも楽しむことを心がけている。次の試合もベストを尽くしたい」「ファンの方に楽しんで帰ってもらえるようなジャンプをしたい」
いずれも素晴らしい言葉に違いないが、毎回同じでは記者も苦労するだろう。見出しになりやすい、もっと派手な言葉を期待する気持ちも分からなくはない。ただ、彼女に威勢の良いキャラクターを求めてはいけないと思う。
試合後の記者会見に臨む際、彼女は先輩選手のために自ら会場のドアを開け、「どうぞ」と促した。会見の途中、写真撮影のためにテーブルを動かさなければならなくなった時も、係員よりも積極的に自ら移動を手伝っていた。
また、会見が終わった際、自分が座っていた椅子をテーブルの下に戻していたのも彼女だけだった。そんな仕草にも、彼女がいかに聡明で礼儀正しいか、垣間見れた。
取材・文■田中周治 撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2014年2月14日号