都心から電車で30分あまり。活気溢れる駅前の商店街が学生や主婦たちから人気を集めるその街に、小林カツ代さん(享年76)の自宅はあった。2階建ての一戸建てに取り付けられた木製の表札には、『KOBAYASHI』の文字。その脇には、にんじんと玉ねぎとピーマンのかわいらしいイラストが添えられていた。
「もう15年くらい前でしょうか、カツ代さんは娘さんと一緒にこちらに引っ越してきたんです。娘さんが結婚して、お孫さんが生まれてからも、ここで変わらず二世帯で暮らしていましたよ」(近所住民)
2005年8月にくも膜下出血で倒れて以来、リハビリのため入院生活を余儀なくされてしまったカツ代さん。2012年2月に長男のケンタロウ(41才)も首都高でバイク事故を起こして寝たきり状態になってしまったため、長女がつきっきりで彼女の看病にあたっていた。
「子育てもあったから娘さんは本当に大変だったと思いますよ。せめて旦那さんさえそばにいてくれればね…。実はカツ代さん、10年ほど前に旦那さんと離婚しているんですよ」(小林家を知る人)
21才のころ、薬を開発する研究員だったAさん(79才)と結婚したカツ代さん。そして主婦になって7年目、家庭料理研究家として活動し始める。大阪でのレギュラー番組を持つほどになり、週に2度も自宅のある東京と大阪を往復。しかし、夫への愛情の深さは変わることはなかった。
「仕事でヨーロッパに行っていた旦那さんが帰ってくる時なんか、カツ代さんは忙しいのにわざわざピンクのスーツを着て空港まで迎えに行ったんですよ」(テレビ局関係者)
1971年に長女を、1972年にケンタロウを出産したが、すでに売れっ子だったカツ代さんは仕事を続けることを決意した。しかし、夫婦は別居してしまう。
「やっぱり夫婦の時間が少なかったのかもしれません。旦那さんにはその時、20才近く年下の恋人がいたんです。カツ代さんはその時はまだ知らなかったのかもしれませんが…」(小林家を知る人)
そして、Aさんは恋人との再婚を決めてしまう。2003年頃のことだった。だが、カツ代さんの口から夫との離婚が語られることは一度もなかった。
「家庭料理を紹介しているのに、“夫を略奪されて熟年離婚した”なんてとてもじゃないけど、告白できなかったというのもあるとは思います。でもそんなことよりも大きかったのは、別れた夫やその相手に憎まれ口を言ってしまうことで、2人の子供たちの思い出の味を損ねてしまうと考えたのではないでしょうか。家庭料理と家族の思い出は深いつながりがありますから、歯軋りするような思いで封印したんでしょうね」(前出・小林家を知る人)
※女性セブン2014年2月20日号