数あるダイエット法のなかでも話題の糖質制限ダイエット。「炭水化物ダイエット」「満腹ダイエット」とも呼ばれるが、炭水化物や糖質の摂取を制限すれば「腹一杯食べても痩せられる」と、熱心な信奉者もどんどん増えている。
厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」(2010年版)では、1日の炭水化物の摂取量は50~70%が適正とされている。しかし、このダイエット法が普及すれば、日本の食生活は大きく変わる。コメを食べずに肉が主食になれば、畜産業界には朗報かもしれないが、大打撃を受けるのがコメ農家である。
日本人のコメの消費量は、1人1日茶碗2杯程度(170g)で、この50年で約4割減った。しかし、一般的な糖質制限ダイエットでは1日の糖質摂取量を130g以下に抑えることが奨励されている。調味料や野菜にも糖質が含まれていることを考えると、茶碗1杯でも多すぎるということになる。コメの消費量はさらに下がることが予想される。小里康弘・農水政務官が語る。
「コメを食べないダイエットというのはわかりやすいし、興味を引く面はあるのでしょうが、蔓延するのは健康のためにも日本の食糧事情からも好ましくない。日本にはコメを主食とする和食の文化があり、世界遺産にも登録された。本来、和食はバランスのとれた健康食。私は10年ほど前にコメをしっかり食べながらスクワットで10kg痩せた。日本本来の食生活に戻れば、望むような体型になるのではないでしょうか」
経験則に基づく“米飯ダイエット”の勧めだが、コメの流通を支える新潟県のコメ卸売会社の担当者の危機感は深刻だ。
「今後、糖質制限ダイエットが普及すると売り上げに影響が出る可能性が高い。そこで米屋さんには、お客にコメと小麦を比べた場合、食べたときの血糖値の上がり方が違うことを説明してもらうように考えています。コメの場合は小麦より比較的緩やかに血糖値が上がるから、直ちに太るというわけではない。同じ糖質制限をするなら、ご飯よりパンを減らした方がダイエットには効果的でしょう」
と、“ダイエットにはパンよりコメ”という宣伝で対抗しようとしている。
※週刊ポスト2014年2月14日号