いよいよソチ五輪が開幕したが、日本代表選手たちの活躍の陰には、日本のスポーツ職人たちの匠の技が存在する。スキー・モーグルの上村愛子選手が着用するブーツはレクザムのものだ。
同社スポーツ事業部長の林末義さんは、13年前に上村選手と出会ったときのことを、「変形した足がスキーブーツから飛び出しそうなくらいでした」と振り返る。
当時、上村選手は引退を考えるほど悪化した外反母趾に苦しんでいた。林さんは、藁にもすがる気持ちでやってきた彼女の足を見てひるんだ。ところが、足幅や外側のシェルの固さ、インナーの組み合わせでプロトタイプに仕上げたブーツは1足目からフィットする“シンデレラブーツ”だった。ソルトレイクシティ五輪で6位入賞を果たしたこのブーツは、同社にとっても記念すべき「初五輪」だった。
レクザムブーツの歴史は浅い。バブル崩壊後の1992年、大手ブーツメーカーを飛び出した15人が「世界で認められる日本製ブーツをつくりたい」とレクザム社長に掛け合いスタートした。外国メーカーのコピーではない独自のブーツを目指し、オーストリアのシュー・マイスターに学び、足に優しい構造のブーツを開発。上村選手が履き続けてきた理由もそこにある。
「パソコンや3Dプリンタで効率良くなりましたが、最後は人間の目、感覚です」(林さん)
熱い思いがこもったブーツで表彰台に立つ上村選手を夢見る。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2014年2月14日号