自動車保険はとにかく補償内容や特約が細分化され過ぎていて複雑だ。クルマに乗る人なら一度は契約段階で悩んだ経験があるだろう。
「スーパーの狭い駐車場で隣のクルマにドアをぶつけられた」「思わぬ落石でフロントガラスが傷ついた」「入院時のホームヘルパー費用が必要」など、対物・対人の補償のみならず、最近では同乗するペットの補償特約まで登場している。
もちろん、いざというときに備えてあらゆるリスクを保険会社に補償してもらえるのが一番だが、すべてをカバーしようと思えば高い保険料の支払いを覚悟しなければならい。また、万が一事故を起こした際には、対応の慌ただしさから細かい保険内容を忘れてしまうケースも少なからずある。
2月6日に東京海上日動火災保険で発覚した最大10万件規模に及ぶ過去の未払いも、本体の保険契約に付随する「対人“臨時”費用」だった。人身事故で相手が死亡した場合に10万円、入院・通院費用として1~2万円を受け取れる契約となっていた。
同社は「当時(2003年6月以前の契約)は本体保険とは別に請求してもらわないと支払わない運用をしていた」と説明している。つまり、契約者に気付かれなければ補償する必要もないとする、保険会社にあるまじき“事なかれ主義”が罷り通っていたことになる。
『やっぱりあぶない、損害保険の選び方』の著書がある保険コンサルタントの村田稔氏はいう。
「自動車保険は他社商品との差別化を追求するあまり、多種多様な特約商品を次々と開発し、特約によって収入保険料を増やそうとしてきました。しかし、不払い問題が収まらないのも、あまりにも特約が増えすぎて、損保会社や保険代理店の支払いシステムがついていけないからです」
今でこそ補償項目はスリム化する傾向にあるが、かつて東京海上には約4000種類もの特約があったというから驚く。さらに、最近の自動車保険には契約内容に関する新たな問題も浮上している。
「例えば、自家用車でどこかのお店に突っ込んでしまった場合、破損の被害だけでなく休業中の売り上げなど『逸失利益』も保険でカバーしようという動きになっています。ただ、ここでも保険会社の免責事項が曖昧で、どこまでが補償の範囲内なのか分かりにくい商品もあります」(前出・村田氏)