2014年の世界経済はどう動いていくのか。「ここ数年、世界経済を引っ張ると思われてきた新興国が、今年大きな転換点を迎えるだろう」と予測するのは大前研一氏である。以下、大前氏の解説だ。
* * *
新興国の大半は「1人の優れたトップ」でもっていて、その人がいなくなったらどうなるか全くわからない。
その典型は、低迷しているBRICSだ。ブラジルはルセフ大統領がルーラ前大統領の傀儡にすぎず、ロシアは国内的にはプーチン大統領の力では解決できない末端の弛みなどが全体の足を引っ張り始めている。
インドはシン首相の経済政策で成長してきたが、2014年5月頃までに予定されている総選挙で現与党の国民会議派が勝つ可能性はほとんどなく、ヒンズー至上主義のインド人民党が再び政権を握る可能性が高い。中国でも強権管理型の習近平体制に対し、国内の不満が高まっている。
最後のSの南アフリカもマンデラ元大統領の崇高な理想にもかかわらず、追悼式典で挨拶に立った現職のズマ大統領がブーイングの嵐に見舞われたことが象徴するように、公平で安全な社会はどこかに行ってしまった。
新興国の最大の問題は、政治家と官僚の「腐敗」である。それをなくすには1人の優れたトップに依存する状況から、先進国のように組織やシステムによって統治し、自浄作用を持つようになる必要があるが、それは極めて難しいと言わざるを得ない。
成長に陰りが出てきた新興国の中で唯一の例外になるかもしれないと思えるのが、エルドアン首相が率いるトルコだ。
この国はBRICSやミャンマーほどマネーが殺到して舞い上がってはいない。ポスト・エルドアンの体制が不透明であることなどまだ問題はあるが、政治や官僚の腐敗は他の新興国ほど深刻ではないし、民主主義システムが経済発展と同時に立ち上がって市場もそれなりに機能しているので、ダークホースとして浮上する可能性がある。
※SAPIO2014年2月号