今年、フリーエージェント(FA)制度による人的補償で5人の選手が移籍を果たした。一岡竜司(巨人→広島)、脇谷亮太(巨人→西武)、中郷大樹(ロッテ→西武)、藤岡好明(ソフトバンク→日本ハム)、鶴岡一成(DeNA→阪神)だ。3年目を迎える23歳の一岡を除けば、ベテランや中堅クラスの選手が指名された。あるスポーツライターは人的保証についてこう話す。
「人的補償を要求するチームは、FA流出による痛手に即効性を求めるため、計算できる選手を獲得する傾向にある。となれば、必然的に20代後半から30代の選手を求めることになる。
過去を振り返れば、人的補償でもっとも活躍したといえる福地寿樹(西武→ヤクルト)は33歳になる年。いまやDeNAに欠かせない先発左腕の藤井秀悟(巨人→DeNA)は35歳になる年でした。もっと上の年齢もいて、江藤智(巨人→西武)は36歳になる年、工藤公康(巨人→横浜)は44歳になる年でしたからね。
過去に若手といえたのはユウキ(近鉄→オリックス)、赤松真人(阪神→広島)、高濱卓也(阪神→ロッテ)くらいでしょう。
今年も同じ傾向が見受けられます。阪神はDeNAの37歳になる正捕手・鶴岡を、西武は巨人から33歳になる準レギュラーの脇谷を獲得。同じく西武はロッテから30歳になる中継ぎ・中郷を、日本ハムはソフトバンクから29歳になる中継ぎ・藤岡好明を指名(いずれも2014年に迎える年齢)。中堅からベテランの計算できる選手を獲っています」
そうしたなかで唯一の例外が、広島が巨人から獲得した23歳の一岡竜司だ。巨人時代はファームとはいえ、1年目から抑えを任され、2年目の昨年は32回2/3を投げて、42奪三振。防御率1.10。
「層の厚い巨人だから一軍定着できなかっただけで、将来有望な投手。FAで巨人に移籍した30歳の大竹寛が広島に残留するよりも、長い目で見たらトクかもしれない」(同前)との声もある。
2002年にオリックスに移籍したユウキは、シーズン後半に先発として定着し、7勝(1敗)防御率1.93という好成績を残し、FAで近鉄へ行った加藤伸一の0勝(1敗) 防御率9.82という数字を上回った。ユウキも、一岡と同じ23歳になるシーズンだった。
若手投手が育ってきている広島だからこそ、目先以上に将来性を考えた一岡指名だったとも捉えられる。阪神からの人的補償で花開いた赤松のように、二匹目のドジョウならぬ二匹目のコイとなれるか。