ソチ五輪でボブスレー日本代表チームが着用する競技用ウェアを製作するのは、デサント社。同社・開発部の戸床文彦さんは、「ボブスレーの勝敗を決めるのはソリに乗り込むまでのスタートダッシュです。ウェアの良し悪しでコンマ何秒か短縮できるのですから責任は重大です」と語る。
日本代表チームとサプライヤー契約を結んだのは昨年6月。翌月の初めての打ち合わせでは、鈴木寛選手らに「高機能ランニングウェア」を試着してもらい意見を求めた。締めつけ感の強いウェアに対して、選手の要望は「動きやすく」。選手の意見を細かに拾い上げながらつくり直していった。
完成したウェアの特徴は、腰から膝にかけて反発力の強い素材を配置した「パワーライン」。脚が前に振り出される時にラインが引き伸ばされ、その戻る反発力が次のキックに生かされる。
さらに、ソリを押す時に力のかかる腰の部分にはパワーメッシュ素材でホールド機能を加えた。難しいのは、一人ひとりの選手に合わせてフィットさせることだという。
「練習量によって筋肉の付き方が変わり、体型も変化します。それに応じてつくり直さなければならず、時間との闘いは精神的にキツかったですね」
パタンナーの畑中涼子さんが苦しかった日々を振り返る。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2014年2月14日号