1998年の長野大会以来、4大会ぶりの五輪出場を果たしたアイスホッケー女子日本代表“スマイルジャパン”。現在、法政大学1年生の床亜矢可(とこあやか)選手(19才)は、鉄壁のディフェンダーとしてスタメン入りしている。
北海道・釧路育ち。アイスホッケー元日本代表だった父の影響もあって、小学1年生から同じ道に進んだ。床は、中学3年生にして18才以下の日本代表に選ばれるなど、早くからその実力が評価されていた。
だが、高校1年生の秋、その人生が暗転する。彼女を病魔が襲ったのだ。実母・栄子さんが当時の様子を語ってくれた。
「学校の階段を上るだけで息切れがし、やがてペンを持つこともできなくなったんです。
釧路の病院をいくつ回っても、病名がわからなくて。東京の病院で検査した結果、バセドー病と診断されました」(栄子さん、以下「」内同)
バセドー病は、甲状腺機能亢進症のひとつで、疲れやすく、息切れが顕著になるという症状が表れる。歌手の絢香(26才)も、この病気のため休業したのは知られるところだ。
治療の選択肢は2つ。手術か投薬か。
「亜矢可は“少しでも早く代表に復帰したい”と、甲状腺の切除手術を希望しました。私は猛反対でした。もし手術をしたら、首に10cmほどの痕が残るし、薬で治るなら、無理にする必要はないと思ったからです」
口を開けば、けんかの日々。栄子さんが「長い目で見ようよ」と言えば、床は「お母さんはわかってない!」の一点張り。2人の言い分は平行線のまま、3か月が過ぎた。
ある日、床から手紙を渡された栄子さん。そこには床の、口では言えない素直な気持ちがしたためられていた。
<本当はこのままが良い。でも、テスト勉強中とかに、あの時(手術を)しときゃ良かった、と思いたくない。逃げ場があると、本当に弱い人間だから、すぐ逃げたくなる。言い訳もしたい。病気のせいで失敗したこと、全てなすりつけちゃう。(中略)手術しないで後悔するなら、したいです>
「手紙を読んで、亜矢可の思いがすごく伝わってきて、ぐっときたというか。娘の覚悟を目の当たりにして、何があっても、親として背負っていこうと決意しました」
手術は無事に成功。床は、もうすぐ夢の舞台に立つ。
※女性セブン2014年2月20日号