もうすぐ新年度。新入学に新入社員とフレッシュな人材が新しい世界へはばたく季節だ。日本企業には、通常の育成システムや就職活動では採用できない、若くて才能ある人材を発掘・育成していこうという発想が必要だと大前研一氏は指摘する。
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2014年の日本企業は、人事政策で大きな課題を抱えている。課題のうちのひとつは、優秀な人材の「青田買い」だ。これは今、とくに重要になってきている。いわば、女子スキージャンプ界に登場した高梨沙羅選手のように、若くて才能ある人材をビジネスの現場で発掘・育成していこうという発想だ。
たとえば、最近はゲーム開発イベントや起業家コンテストが大盛況で、13~20歳の若者たちがこぞって参加している。
彼らはともすれば文部科学省の偏差値教育システムの中では成績上位ではないかもしれないが、自分が興味のある領域では目の色が違い、抜きん出た能力を発揮する。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジャック・ドーシーらに憧れて尖りまくり、ビジネスセンスに秀でている。
もし企業が彼らを採用ターゲットにしたイベントやサマーキャンプをもっと積極的に展開したら、有能な若者がごっそり集まるだろう。その中から将来有望な異色の人材を発掘し、企業プロジェクトに参加できる仕組みを作っていくのだ。
逆に言えば、大学3年生を主な対象にした12月1日の「就職活動解禁」から会社説明会を始めているような人事部では、世界で戦える真に有能な人材は永遠に採用できないと思う。
アメリカには世界中から優秀な人材を吸い寄せるシリコンバレーを中心とした新・生態系企業群がある。ドイツには小学生から職業意識を植え付けるデュアルシステムの教育制度がある。
それらに伍して若く優秀な日本人を育成・確保していくには、企業の人事政策を根本から変えなくてはならない。それから現在の人材構成を一新するには最低でも20年はかかるが、とにかく最初の一歩を踏み出さない限り、日本企業が真のグローバル化を遂げることはできないだろう。
※週刊ポスト2014年2月21日号