全国紙の中でもとりわけ保守的な論調で知られる産経新聞ではただいま韓国批判キャンペーンまっしぐら。そんな折、1月31日付の同紙1面を飾ったのは「慰安婦漫画 韓国OK 『政治的』日本は撤去」という記事だった。1月30日にフランスで開催された漫画展示会「アングレーム国際漫画祭」に、日本と韓国それぞれの漫画家が「従軍慰安婦」をテーマにした作品を持ち込んだのだが、日本側の作品だけが主催者に撤去されたことを伝えている。
同記事は韓国側の作品について、「旧日本軍の軍人による婦女暴行を露骨に描いた」ものと紹介。一方、「(慰安婦の)強制連行はなかった」とする日本側作品については、かなり好意的に取り上げた。
ここまでならよくある“産経のお家芸”だが、少しばかり記事にキレがない。韓国の反日工作に立ち向かった日本側作品の作者の背景について、なぜか産経は言及していないのだ。宗教事情に詳しいジャーナリストが指摘する。
「この漫画祭に日本から作品を持ち込んだ『論破プロジェクト』という団体は、新興宗教・幸福の科学の支援を受けている団体です。そのことを隠しているわけではないし、ちょっと調べればわかることなんですが、なぜ産経は書かなかったのか」
関係者によれば、幸福の科学は昨年から、公式ホームページで『論破プロジェクト』を大絶賛。また同プロジェクトの作品には、2012年の東京都知事選に、同団体を支持母体とする幸福実現党から出馬したトクマ氏のマスコットキャラクター『トックマ』も登場する。
実際、幸福の科学に問い合わせると、漫画のフランス語翻訳に協力したことを認めた上で、「国益に適った活動であり、全国紙が報道することも問題ない」(広報局)。
記事は日本側漫画の発表意義を好意的に扱った上で、「(日本側作品は)極右団体がつくった政治宣伝であり、祭典にそぐわない」とのコメントを出した主催者に疑問を呈す格好だ。しかし、ここまで書くからには、同プロジェクトの思想背景についてもきちんと伝える必要があったのではないか。
産経新聞に取材を申し込むと、「個別の記事については答えられない」との回答だった。
意図的に触れなかったのかどうかは定かではないが、“不都合な事実”を隠すのは竹島・慰安婦問題を巡る韓国側主張の常套手段。その土俵に乗ってしまうのは避けたほうがいいのでは。
※週刊ポスト2014年2月21日号