舛添要一元厚労相の圧勝に終わった東京都知事選はこれまでの日本と何かが変わる予兆はあったのか――、池上彰さんが解説する。
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投票率は過去3番目に低い都知事選でしたが、これからの日本を左右しそうな「芽」がいくつかありました。
まず、新しい野党のあり方です。元航空幕僚長の田母神俊雄さん(65才)の得票数は、60万票を超えました。安倍政権よりも強硬派で、純化した保守といえます。そこに、20代など若い有権者の票が集まりました。若者の右傾化を示唆してもいますが、こういった候補がこれからも出てきて、自民党では物足りないと思っている人たちの支持を集めると、新しい野党が誕生するかもしれません。
新しい野党の可能性は、細川護煕元首相(76才)が目指そうとしていたものにも感じられました。健全な政治には、すぐに与党と交代できるような野党の存在が欠かせません。民主党が力を失った今、その役割を担える野党はどこなのか。模索の時期が始まったのではないでしょうか。
それから、ネット活用の可能性も見つかりました。5番手に入った家入一真さん(35才)。彼は、立候補の表明時には政策を持っていませんでした。普通、候補者は政策とともに立候補を表明しますよね。ところが家入さんは、まずは出馬を決め、「政策はみんなで作っていく」と語ったんです。
家入さんはその後、ネットで「どうしたらいいと思うか」と意見を集め、それを後に120の「ぼくらの政策」にまとめました。
家入さんが試みたのは、まったく新しい使い方です。ネットを利用して政策を固めるという戦略をとる人たちは、今後も出てくることになるでしょう。
※女性セブン2014年2月27日号