テレビ東京が絶好調だ。視聴率では、平日プライムタイム(午後7~11時)でフジテレビやTBSを抜いて民放4位に位置することはめずらしくない。経営面でも、昨年4~9月期の経常利益の伸び率は91.5%増をマーク。昨年の年間視聴率で初の2冠を獲得したテレビ朝日を抑えて、民放トップの伸び率だ。
いったい、テレ東がここまで躍進する背景には何があるのか。元テレビ東京取締役で『テレビ番外地 東京12チャンネルの奇跡』(新潮新書)の著者である石光勝氏は「ターゲットの明確化」がカギと解説する。
「テレ東はいち早く高齢化社会に対応し、中高年にターゲットを絞った番組作りを進めました。スマホやゲームに夢中でテレビ離れしている若者層に合わせて番組を作っている他局とは“目線”が大きく異なります」
その象徴が今年1月から放送が始まったドラマ『三匹のおっさん』(金曜19時58分~)だ。
北大路欣也(70)、泉谷しげる(65)、志賀廣太郎(65)という『おっさん3人組』が「おっさんをなめるなよ!」という決めゼリフで痴漢やひったくり犯など、町内の悪者を見事に成敗する。そんな時代劇風現代劇が人気を博し、初回視聴率は11.6%を記録。第3回放送も9.9%と好調をキープしている。上智大学の碓井広義教授(メディア論)がいう。
「3人のおっさんが主演のドラマなんて他局では絶対にやりませんよ(苦笑)。いまだにF1層(20~34歳の女性)をターゲットにするテレビ局が多い中、テレ東は圧倒的に視聴者数の多い中高年を大切にしています。今は『テレビを見るならNHKかテレ東』という中高年も増えている。テレ東は“大人の味方”なんです」
他にも長寿番組の『開運! なんでも鑑定団』(火曜20時54分~)や前出の『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』など、中高年が自宅でのんびりと視聴できる番組が多い。大晦日には『年忘れにっぽんの歌』で“常連”である固定層のハートをガッチリとつかみ、フジテレビの裏番組を大きく突き放した。硬派な番組もお手のもの。
『ワールドビジネスサテライト』を筆頭に、経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』(火曜22時~)や村上龍が司会を務める『カンブリア宮殿』(木曜22時~)など「ビジネスマン御用達」の経済番組が並ぶ。
さらに選挙番組では池上彰氏を起用し、今やすっかり「テレ東の選挙の顔」として定着。各局がエース級を投入して選挙特番に臨む中、公明党候補に創価学会との関係について尋ねるなど「テレビのタブー」を軽々と突破して、在京民放のうちテレ東だけが視聴率10%を超すひとり勝ちを果たした。
※週刊ポスト2014年2月21日号