2月13日に日本穀物検定協会によるコメの「食味ランキング」が発表された。馴染みがないブランドでも特Aランクのコメは美味そうだ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が紹介する。
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また記録が更新された。ソチの話ではない。コメの話だ。日本穀物検定協会が、13日に発表した2013年産米の「食味ランキング」で、食味がすぐれているとされる「特A 」の評価が38を数え、昨年更新した記録29を一年で塗りかえた。
今年初めて「特A」に選ばれた香川の「おいでまい」、鹿児島の「あきほなみ」など目新しい品種も並んだ。香川の「おいでまい」は母方の祖父に「キヌヒカリ」を持ち、交配と試験栽培を繰り返し、昨年、本格デビューとなった。鹿児島の「あきほなみ」の母は「ヒノヒカリ」をもとに、作付時期の分散や食味の向上を狙って開発された。
東日本ではいまだなじみが薄いが、関西以西で絶大な人気を誇るのが、この「キヌヒカリ」と「ヒノヒカリ」だ。どちらもコシヒカリ系統の品種だが、コシヒカリほど甘味や粘りが強いわけではない。だがその穏やかな主張が、かえっておかずの味を引き立てる。コメ自体も旨いが、和洋中、どんなおかずにも合う。主役を独り占めするのではなく、他の味を引き立てる名バイプレイヤーでもある。
イネの品種改良は、「交配育種法」という交配法が主流とされる。現在も「母親」になるイネのめしべに父親になるイネの花粉をふりかけて行われる。母、父、それぞれのいいとこ取りを狙って行われるが、交配でできた種はそれぞれ微妙に違う性格を持ち合わせる。その数1000以上。ここから食味がよく、収量が多く、病気に強いものなどの観点で「選抜」を行い、新たな品種が開発される。
生育環境に適したイネの開発となると、当然その地域で育った食味のいい品種がベースとなる。そしてこの数年、品種改良はさらに進み、「特A」を獲得する新しい品種が増えてきている。北海道の「ななつぼし」(母方に「ひとめぼれ」系)、福岡の「元気つくし」(母は「つくしろまん」)、佐賀の「さがびより」(母は「天使の詩」)など地域に根ざしたものが増えている。
また特A 常連のなかでも、熊本の「森のくまさん」は母にヒノヒカリ、父がコシヒカリという超一流血統。昨年初めて特Aを獲得し、今年2年連続の特Aとなった「くまさんの力」も母はヒノヒカリだ。
コメは同品種でも、水や地質など生育環境の微妙な違いで、同エリア内でも地域ごとに味が異なる。通常は出荷の際、地域ごとの品種でブレンドされてしまうが、近年では農家と消費者が直接取り引きをしたり、農家を指定できるようにもなってきた。たまには、いつもと違うコメを楽しむ。たった一度の注文から、食卓が劇的に変わるかもしれない。