いよいよ消費税増税が目前に迫ってきた。5%から8%の税率アップは高額商品ほど家計の負担が増すので、何とか3月31日までに大きな買い物は済ませたいと考えるのは、消費者心理として当然だろう。
しかし、人生で一番高い買い物である住宅は「即断即決」とはいかない。
3月に入ってから物件の下見、住宅ローンの審査、各種契約手続き、引っ越しの準備……などしていたら、あっという間に4月は訪れる。住宅にかかる課税は物件の引き渡し時点なので、3月中にマイホームのカギを手にするスケジュールが組めなければ、取り越し苦労で終わる。
都内の大手不動産会社は、「駆け込み需要は落ち着き、いま住宅購入を考えているお客さんの大半は増税後の諸費用がいくらかかるのかを見積もっている」と話す。
たとえ8%の税率で買っても、ローン減税の充実や低所得者向けの「すまい給付金制度」などの優遇策を活用すれば、増税分の負担をチャラにすることも可能なため、慌てずにじっくり試算してみる価値はある。
住宅評論家の山下和之氏もこんな見方をする。
「消費税引き上げ後には一時的に購入希望者が減る可能性が高いので、不動産会社や販売会社では大歓迎されるはず。売れ行きの悪い商品については値引きなどの可能性もあるので、むしろチャンスと考えていいのではないでしょうか」
1997年の増税時にも新設住宅着工件数が前年に比べて15%も減り、マンション販売では空室リスクを減らす“投げ売り合戦”が繰り広げられた。そう考えれば、今回も増税分ぐらいの値引きは期待でき、思わぬ掘り出し物件が手に入らないとも限らない。
だが、注意したいのは、消費税は建物部分だけでなく各種手数料にもかかること。
「例えば住宅ローンの事務手数料。銀行ローンなどは3万円、5万円などの定額制が多いので、その場合には3%消費税が上がってもさほど深刻な問題ではありません。
しかし、フラット35の中には、借入額の2%などの定率制をとっているところもあります。2%の手数料だと3000万円の借入額で60万円の手数料なので、3%の消費税アップは決して小さくありません」(前出・山下氏)
また、中古住宅など仲介会社を通して取得する場合、仲介手数料にも消費税がかかる。
「400万円超の物件では売買価格の3%+6万円の手数料がかかります。たとえば3000万円の物件なら仲介手数料は96万円で、税率3%アップで売買価格が上がればそれだけ負担は増えることになります」(山下氏)