中国の政治状況は今、これまでとはやや異なる空気も感じられるのだという。中国の情勢に詳しい富坂聰氏が指摘する。
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春節の和やかな雰囲気が残る中国で、今月上旬から大規模な〝掃黄〟(売春・ポルノ取締りキャンペーン)が展開され、人々の正月気分を吹き飛ばしている。
対象となっていた地域は広東省。ホテルやカラオケ、ナイトクラブ、サウナといった娯楽施設、約1万8000ヵ所――うちナイトクラブが約3500ヵ所、サウナが約4200ヵ所――に捜査のメスが入れられたというから凄まじい規模だ。
この一斉捜査で売春にかかわったとして逮捕されたのが920人。38軒のナイトクラブと156軒のサウナに対して営業停止処分が下された。
なかでもターゲットになったのが東莞市だった。同市の捜査のなかで逃亡した51人に対しては微罪ながらも徹底的に追い詰めると公言する力の入れようなのだ。
3月の中国は大切な両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の時期を迎える。それに合わせて大々的な〝掃黄〟と陳情者の排除が行われるのは、かつて当たり前のことであった。
だが、ここに来てにわかに〝掃黄〟が始まるのには何となく嫌な背景が滲むという。
「というのも背後に政治臭が強く漂うからです。そもそも今回の〝掃黄〟に合わせて人民日報が『是か非かを問う』と題した社説を掲載し、この動きがある種の整風運動(1940年代に中国共産党が行なった反対派粛清運動)のニュアンスを含んでいることを示唆したのです。何か昔の中国を思い出させるような暗さがそこにはあるのです」(企業経営者)
本当なら、ちょっと深刻である。