芸能

テレ東路線バスの旅 蛭子・太川のグダグダ話がリアルさ提供

「弱小局」「万年民放最下位」だったはずのテレビ東京は、今や続々と話題番組を世に送り出すテレビ界の台風の目となっている。“下克上”を可能にした戦略とは、いったいどんなものなのか。下手をすると他局から「アマチュアか!」とツッコミを入れられかねない手法でリアリティを追求するのがテレ東流だ。

 たとえば『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』では、旅する蛭子能収(66)と太川陽介(55)が駅で切符を買うだけのシーンや、地図を見ながら目的地までのルートを確かめ合うやり取りを長々と流す。

 ある回では、道に迷った一行が案内所に行き、目的地の道のりを訪ねるのだが、「宮の沢行き」が聞き取れずに蛭子が「ミヤオサワ行き?」と係員に何度も尋ねる何の意味もないシーンも丸々放送。

 さらに次のバスが来るまでにまだ時間があることがわかると、蛭子と太川とが「あと35分もあるよ」「あと35分」と時間を持てあます様までもがノーカットで放送されている。

「他局ならワンカットのシーンなのに、テレ東は太川さんが駅員さんと素で話しているところも全部ノーカットで見せます。プロからすると『何でこんなシーンに時間を割くんだ』となりますが、これが逆にリアリティにつながっている。

 2人がバスの中で寝入った場面や、ぐだぐだの会話シーンを残すことで、視聴者は2人と一緒に旅行している気分になるんです。今の世相はやらせや過剰演出にうるさいので、このくらいのほうがちょうどいい(笑い)」(テレビ業界に詳しい放送作家)

 収録した素材を極力カットをせずにそのまま放送することで、出演者やスタッフの拘束時間や編集の手間を省くことができる。すべては資金力のなさがもたらしたものだった。

 上智大学の碓井広義教授(メディア論)は“弱者ゆえの決心”を高く評価する。

「予算がない中で他局の真似をしても、縮小コピーにしかならない。そこで他局と同じ道は歩まないと決意したことがテレ東という“民放のガラパゴス”の姿なのです。今、それこそが局のオリジナリティであり、武器になっている」

※週刊ポスト2014年2月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン